ホンダ・MTX

ホンダMTXシリーズ：1980年代を彩った2ストロークデュアルパーパスバイク

ホンダが1980年代に製造・販売したMTXシリーズは、50ccから200ccまで幅広い排気量をカバーする2ストロークエンジンのデュアルパーパスモデルとして人気を博しました。軽量で扱いやすい車体、そしてオフロード走行にも対応できる高い走破性が、多くのライダーを魅了した理由と言えるでしょう。本稿では、MTXシリーズの概要、各モデルの特徴、そしてその歴史を詳細に解説します。

シリーズ概要

MTXシリーズは、1980年代に発売されたホンダのオートバイシリーズです。50cc（原付）、80cc/125cc（原付二種）、200cc（軽二輪）と、様々な排気量のバリエーションが用意され、ユーザーのニーズに幅広く対応していました。共通の特徴として、2ストロークピストンリードバルブ単気筒エンジンと、PRO-LINKモノスプリング式リアサスペンションを採用しており、軽快な走りと高い走破性を両立させていました。

各モデル解説

MTX50

1982年3月に発売されたMTX50は、先行モデルであるMT50をフルモデルチェンジしたモデルです。フレームはX字型バックボーンからセミダブルクレードル型に変更され、トランスミッションも5段から6段へと進化しました。エンジンはMT50からのキャリーオーバーですが、中低速域でのトルク特性を向上させるHERP（High-efficiency Rotary Piston）が搭載されていました。輸出仕様には、MB80用79ccエンジンを搭載したMTX80も存在しました。

MTX50R

1983年12月に発売されたMTX50Rは、MTX50をベースに外装や車体を一新したモデルです。MBX50と同系の水冷エンジンを搭載し、当時60km/hだった原付バイクの最高速度自主規制に対応するため、吸排気系やスプロケット、トランスミッションに改良が施されました。最高出力は若干低下したものの、最大トルクは向上しています。1985年にはマイナーチェンジを行い、最高出力を当時の自主規制の最高値である7.2psに向上させ、トランスミッションを再び6段に戻しました。ただし、速度規制のため電気式スピードリミッターが搭載され、HERPは廃止されています。

MTX80R

1983年6月に発売されたMTX80Rは、車体にMTX50R、エンジンにMBX80をベースとしたエンジン（型式名HD08E）を搭載したモデルです。MTX80Rから、排気量の大きいモデルでは2人乗りが可能となりました。

MTX125R

1982年11月に発売されたMTX125Rは、ATAC（自動調整バルブ機構）を搭載したモデルです。

MTX200R

1983年2月に発売されたMTX200Rは、MTX125Rの車体に193ccエンジンを搭載したモデルです。フロントサスペンションには空気ばね式エアサスペンションを採用し、ホイールにはアルミリムを採用するなど、MTX125Rと差別化を図っていました。1985年2月にはMTX200RIIにモデルチェンジ。エンジン出力向上、フロントブレーキのディスク化、リヤダンパーのリザーバータンク付化など、様々な改良が施されました。

シリーズの遍歴とその後

MTXシリーズは、1980年代後半にCRMシリーズ、NX125へと進化・移行していきます。MTX50Rは1988年2月、MTX80Rは同年3月にそれぞれモデルチェンジ。MTX200RIIは排気量を250ccに拡大し、1989年4月にCRMシリーズへとバトンタッチしました。MTX125Rは、1988年3月にXL125Rと統合され、NX125へと繋がっていきました。これにより、ホンダの125ccクラスにおける2ストロークエンジン搭載デュアルパーパスモデルの歴史に幕を閉じました。

まとめ

ホンダMTXシリーズは、その軽快な走りと高い実用性で多くのライダーから愛された、1980年代を代表するオートバイシリーズです。各モデルの個性的な特徴や、シリーズ全体の歴史を知ることで、その魅力をより深く理解することができるでしょう。

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