ホンダ・NX125

ホンダNX125：街乗りを重視した125ccデュアルパーパスモデル

ホンダが1988年に発売したNX125は、125ccの原付二種に分類されるデュアルパーパスモデルです。先行モデルであるXL125Rをベースに開発されましたが、単なる改良ではなく、新たなコンセプトに基づいたモデルとなっています。

走行性能と利便性の両立

NX125の開発コンセプトは、従来のオフロードバイクとスーパースポーツバイクの長所を融合させることにありました。そのため、NX125はオフロード性能よりも、むしろ街中での扱いやすさと快適性を重視した設計となっています。

エンジンは、空冷4ストロークSOHC単気筒の124cc。基本設計は過去のモデルと共通ですが、圧縮比や最高出力、キャブレターなどの調整によって、扱いやすい特性を実現しています。特に注目すべき点は、セルモーターによる始動方式の採用と、6速から5速へのトランスミッション変更です。これにより、始動性と操作性が向上し、街乗りでの使い勝手が向上しています。

車体構造も、扱いやすさを考慮した設計です。ダイヤモンド型フレーム、テレスコピックフロントフォーク、プロリンク式リアサスペンションといった基本構造はXL125Rと共通ですが、フロントサスペンションのエア併用式は廃止され、ジオメトリーも変更されています。また、ホイールはアルミニウム合金製のスポークホイールとなり、タイヤパターンも専用設計となっています。ブレーキシステムも、前輪に油圧式シングルディスクブレーキを採用することで制動力を向上させています。

スタイリングも、特徴的です。AX-1と同様のセミカウルを採用し、角型2眼メーターが特徴的な外観となっています。また、フロントフェンダーは固定式のダウンタイプで、リアキャリアと大型スキッドプレートも標準装備されています。これらの装備は、日常使用における利便性を高めることを目的としています。

日本市場での苦戦と海外展開

NX125は、年間1500台の販売計画で発売されましたが、日本市場では芳しい結果を残せませんでした。いくつかの要因が考えられます。まず、1970年代以降、小型自動二輪車の市場は縮小傾向にありました。ユーザーはより高性能な上位クラスのバイクを求めるようになり、小型自動二輪車は衰退しつつありました。さらに、1975年の二輪免許制度改正により、小型自動二輪免許は中型自動二輪免許取得のための通過点となり、市場の需要を減少させる結果となりました。

NX125のコンセプトである「街乗り重視のデュアルパーパス」も、市場に十分に理解されませんでした。加えて、初期製造モデルでフレームのクラック問題が発生したことも、販売低迷の要因の一つとなりました。これらの問題により、日本国内仕様のNX125はマイナーチェンジを行うことなく、1993年に生産終了となりました。一方、海外向け輸出仕様は1999年まで生産が継続されました。NX125は、時代の流れや市場のニーズ、そして製品上の問題によって、日本市場では成功を収めることができなかったモデルと言えるでしょう。しかし、その扱いやすさと利便性を重視した設計は、独自の価値を持っていたと言えるでしょう。

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