ホンダ・R125

ホンダR125：日本メーカー初の国際レース挑戦記

ホンダR125は、本田技研工業が1954年のブラジル・サンパウロ国際レース参戦のために製作した、オートレース用競走車です。この挑戦は、日本のオートバイメーカーにとって、海外レースへの初挑戦という歴史的な出来事でした。

誕生の背景：国際レースへの招待

ホンダのレース活動は、創業者本田宗一郎の時代から行われていました。当初は、国内のダートトラックで行われるレースが中心でしたが、1953年、日本小型自動車競走会連合会から、ブラジル・サンパウロで開催される国際オートバイレースへの参加依頼が届きます。サンパウロ側は、日本メーカーの車両で4クラス合計10名ほどの選手を招待し、旅費・滞在費を負担する条件を提示しました。

複数のメーカーが参加を検討する中、ホンダとメグロ製作所は、費用負担の一部不足を補う形での参加を決断。ホンダは125ccクラスにR125を投入することになります。

R125：1ヶ月の突貫工事

サンパウロ出発まで1ヶ月という時間しか残されていなかったため、R125は既存の市販車ドリームE型をベースに、急ピッチで製作されました。146ccのOHVエンジンを125ccに排気量変更し、キャブレター位置の変更、ワンオフのパイプフレームへの搭載、さらにはベンリイJ型のリアシートと燃料タンクを流用するなど、創意工夫が凝らされました。限られた時間の中で、熟練の技術者たちが作り上げた、まさに特注マシンと言えるでしょう。

サンパウロ国際レース：完走への挑戦

ホンダからは、ライダーとして大村美樹雄、整備士兼マネージャーとして馬場利次がサンパウロへ渡航。出発前に本田宗一郎から「完走だけは」と激励された大村は、日本のダートトラックとは異なる舗装されたサーキット、そして性能面で勝るヨーロッパ勢のレーサーとの戦いの中で、完走を目指します。

レースは1周8kmのコースで行われ、大村は13位でフィニッシュ。優勝はイタリアの選手でした。しかしながら、日本のメーカーが国際レースで完走を果たしたという事実は、大きな成果として受け止められました。本田宗一郎をはじめとする関係者は、この結果に大きな喜びを感じたことでしょう。

R125：その後の軌跡

レース後、帰国のための資金調達に苦労したホンダは、R125を売却せざるを得ませんでした。しかし、このサンパウロでの経験は、ホンダの国際レースへの挑戦を加速させる重要な転換点となります。その後のマン島TTレースへの挑戦表明にも、R125と大村、馬場の活躍が大きく影響していることは想像に難くありません。現在、ホンダコレクションホールに展示されているR125は、2000年に復元された車両です。

まとめ：日本のオートバイ史における1ページ

R125は、単なる一台のオートバイではありません。限られた時間と資源の中で、不可能を可能にした技術者の情熱と、国際レースへの挑戦という、日本のオートバイ産業史における重要な1ページを象徴する存在です。R125の挑戦は、日本のオートバイ技術のレベルの高さを世界に示し、後のホンダの国際的な成功へと繋がる大きな一歩となりました。その挑戦の歴史は、現在もなお、多くの人々に感動と勇気を与え続けています。

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