OHV

OHV（オーバーヘッドバルブ）について

OHV（Over Head Valve）とは、4ストロークエンジンのバルブ機構の一種であり、日本語では「頭上弁式」とも呼ばれています。従来のサイドバルブやスライドバルブとは異なり、バルブはシリンダーヘッドの上部に位置しており、カムシャフトをシリンダーブロック側に配した構造を持っています。そのため、OHVエンジンは「プッシュロッドエンジン」とも呼ばれることがあります。

構造と特徴

OHVエンジンでは、カムシャフトがシリンダーブロックにあって、プッシュロッドを介してロッカーアームを押し上げ、バルブの開閉が行われます。この方式は、バルブの位置をシリンダーボア内に配置することができ、燃焼室をコンパクトに設計できるため、熱効率や出力の向上に寄与します。

第1号とされるOHVエンジンは、スコットランド系アメリカ人のデビッド・ダンバー・ビュイックによって1902年に開発されました。その際、内燃機関においてはサイドバルブやスライドバルブが主流でしたが、OHVはその利点から広く採用されることになりました。

OHVのメリットの一つは、燃焼室の表面積を抑えることができ、効率的な熱管理を実現できる点です。これは、ノッキングを防ぎ、圧縮比を高めることを可能にするため、燃費向上にも寄与します。しかし、OHVエンジンは高回転域におけるバルブの追従性に問題があり、SOHC（シングルオーバーヘッドカムシャフト）やDOHC（ダブルオーバーヘッドカムシャフト）と比べると、燃費や出力面で劣るとされます。また、排出ガス規制への対応にも課題があります。

OHVの変遷

OHVエンジンの採用例は、自動車、オートバイ、汎用エンジン等、幅広い分野に及びます。特に自動車界では、1960年代から1980年代にかけて日本車に多く採用されました。トヨタやダイハツといったメーカーは、商用車にOHVエンジンを搭載していましたが、1990年代以降、OHVの採用は減少し、ほとんどがSOHCまたはDOHCに移行しました。ただし、大型トラックやバスの中排気量エンジンではOHVが公益性の観点から依然として重用されています。

アメリカ車でもOHVエンジンは長年使用されてきました。シボレー・コルベットを含む様々な車両には、この技術が今でも多く見られます。コルベットでは、エンジンの軽量化や低重心化に貢献し、OHVの利点を最大限に活かしています。最近では、OHVエンジンに可変バルブタイミング機構が搭載されるようになり、今までの限界を突破する試みも見られます。

オートバイと航空機

オートバイ業界においても、ハーレーダビッドソンは長年にわたりOHVエンジンを採用しています。このタイプのエンジンは低回転型で高トルクに特化しているため、特にクルーザー型オートバイでは人気があります。ホンダやヤマハも、近年では高回転型でないV型2気筒モデルにOHVを採用する場面が増加しています。

航空機用エンジンでもOHVは重要な役割を果たしています。中低回転数帯での高トルクは、プロペラを効率的に回すために求められるため、OHVエンジンは理想的です。このように、多彩な分野での利用が続いているOHVは、特に耐久性や信頼性が求められる場所での優位性を保っています。

結論

総じて、OHVはそのシンプルでコンパクトな構造が評価され、様々な機械において重要な役割を果たしています。特に自動車やオートバイのエンジンにおいて採用されることで、動力性能や耐久性の向上が図られていますが、今後もその進化が期待されます。

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