ホーキング (2004年のテレビドラマ)

ホーキング：天才物理学者、スティーブンの波瀾万丈な前半生

2004年、BBC Twoで放映されたイギリスのテレビ映画『ホーキング』は、後に世界的な物理学者となるスティーブン・ホーキングの若き日の物語を描いています。難病と闘いながらも類まれな才能で宇宙の謎に挑んだ彼の姿は、多くの視聴者の心を揺さぶりました。日本では2012年にディスカバリーチャンネルで放送され、2014年にはDVDが発売されています。DVDは『ベネディクト・カンバーバッチ ホーキング』というタイトルで販売される場合もあります。

映画は、1978年のノーベル賞授賞式直前のペンジアス博士とウィルソン博士へのインタビューから始まります。彼らは宇宙マイクロ波背景放射（宇宙の果てから届くノイズ）の発見で受賞しましたが、その発見が後にホーキングの理論を裏付ける重要な証拠となるのです。

場面は1963年に移り、21歳の誕生日を迎えるスティーブンは、家族や友人たちと祝宴を挙げます。そこで彼はジェーンと出会います。ケンブリッジ大学で物理学を学ぶスティーブンは、難解な理論を語りながらも、ジェーンの関心を惹きつけます。しかし、その喜びもつかの間、スティーブンは突然、立ち上がれなくなります。

病院での検査の結果、彼は筋萎縮性側索硬化症（ALS）と診断されます。徐々に身体能力を失っていく中、スティーブンは宇宙論の研究に没頭します。当時、宇宙は常に存在し変化しないとする「定常宇宙論」が主流でしたが、スティーブンは「ビッグバン」理論を支持します。彼の研究は、著名なホイル教授らから反発を受けながらも、着々と進展していきます。

スティーブンは、数学者のロジャー・ペンローズとの議論から「逆行する時間」という概念に到達。宇宙の始まりを仮定するビッグバン理論に基づいた博士論文を提出し、アインシュタインの相対性理論における矛盾点を解明することに成功します。この功績により、彼は奨学金を得て研究を続けることができるようになりました。

ジェーンとの結婚を経て、スティーブンの研究は大きな転機を迎えます。「定常宇宙論」が否定され、「ビッグバン」理論が支持されるようになったのです。しかし、ホイル教授は、ビッグバン理論が正しければ、その名残である宇宙背景放射が存在するはずだと反論します。その放射が観測されない限り、スティーブンの理論は証明されないままでした。

映画は再び1978年のペンジアス博士とウィルソン博士のインタビューに戻ります。彼らは、観測したノイズこそがビッグバン理論で予言された宇宙背景放射の残光であることを明らかにします。理論ではなく、実証が重視されるノーベル賞において、その正体も分からぬまま観測されたノイズこそが、受賞の対象となったのです。

1964年、身体は不自由になってもなお、希望に満ちたスティーブンは宇宙の謎に挑み続けることを誓います。映画は、彼の不屈の精神と、周囲の人々との深い絆、そして宇宙に対する限りない探究心を描き、感動的な幕を閉じます。

ベネディクト・カンバーバッチを始めとする豪華キャスト陣の演技も素晴らしく、スティーブン・ホーキングという偉大な科学者の人間像を深く理解できる作品です。宇宙物理学や科学史に興味のある方はもちろん、感動的な実話ドラマとして、多くの方々にご覧いただきたい作品です。

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