ホースケア

地方競馬法人馬主：ホースケアの詳細

地方競馬において独特の馬主活動で知られる(株)ホースケアは、東海地方を中心に全国各地で競走馬を所有し、出走させている法人馬主です。JRAの馬主資格は保有していませんが、交流競走を通じてJRAのレースにも参戦しています。同社の設立は、グリーンチャンネルの解説者としても知られる中村義則氏によるもので、「知識やノウハウの活用」を目的として設立されたとされています。登記上の代表者は中村文正氏です。

ホースケアの事業戦略：競走馬の仕入れと出走戦略

ホースケアの最も特筆すべき点は、その競走馬の仕入れ方法にあります。一般的なJRAの馬主がセリ市や私取引で幼駒を購入するのに対し、ホースケアは他の馬主から何らかの理由で手放された競走馬を査定の上、購入しています。この戦略は、地方競馬の特性に着目したものです。地方競馬は地区によってクラス編成や競走条件が異なるため、成績不振の競走馬であっても、適切な地区へ移籍することで成績を向上させる可能性があるという考えに基づいています。

ホースケアは、購入した競走馬の能力を綿密に評価し、その能力に最適な出走形態を選択することで、投資額の回収を目指しています。このビジネス的なアプローチは、賞金獲得を第一とするJRAの一般的な馬主とは異なる点であり、地方競馬における賞金減少傾向と現役競走馬の取引増加という現状を踏まえた、時代を反映した戦略と言えるでしょう。

出走回数の多さとそのリスク

ホースケアのもう一つの特徴は、その圧倒的な出走回数にあります。2006年から2014年にかけて8年連続で全馬主中1位を記録し、2010年には2006年の約3倍の出走回数を達成しました。この戦略は、出走手当収入の最大化を目指したものです。出走手当は、賞金とは別に支払われるため、出走回数が多いほど収入が増加します。例えば2010年の出走回数4801回に最低額の出走手当2万7000円を乗じた場合でも1億3000万円、平均額6万円と仮定すれば2億8800万円となり、当時の収得賞金1億1500万円を大きく上回ります。

しかし、この戦略はリスクも伴います。出走回数の増加は、過密なローテーションとなり、競走馬の故障や寿命短縮につながる可能性があります。実際、ホースケアの所有馬の勝率、連対率、複勝率は他の馬主と比べて著しく低く、2006年から2010年の5年間において、主要なリーディングオーナーランキング上位100位以内の馬主の中で、これら3つの指標をホースケアを下回る馬主はいませんでした。重賞勝ち馬であっても、過密なローテーションは例外ではありませんでした。代表的な例として、エレーヌは移籍後わずか9ヶ月で20戦に出走し、最終的には心不全で死亡しています。

ホースケアは、この点について「陸上競技のオリンピック選手が毎週レースに出場することは無理だが、中学生の運動会レベルなら可能」という持論を展開しています。この発言は、出走機会の確保を重視するあまり、競走馬の健康状態を軽視しているとの批判も招いています。

所有馬と預託先

ホースケアは、笠松、名古屋、金沢、高知競馬場などに多くの競走馬を預託しています。特に笠松競馬場では、2レースに1頭はホースケア所有馬が出走するほどです。また、所有馬の中には、西山茂行氏が中央競馬で所有していた馬も少なくありません。これらについては、仲買業者を通じて処分され、ホースケアが直接的に取引に関与していないとされています。

まとめ

ホースケアは、地方競馬の現状を踏まえた独自のビジネスモデルで成功を収めていますが、その戦略は競走馬の健康管理や競走への倫理的な問題点についても議論を呼ぶものです。地方競馬における馬主のあり方について考える上で、重要な事例と言えるでしょう。

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