ホーム・ノット・アローン

ホーム・ノット・アローン：コロナ禍が繋いだ、心温まる物語

2020年5月、新型コロナウイルス感染症の拡大により外出自粛が続く中、NHK大阪放送局は画期的な試みとして『ホーム・ノット・アローン』を制作しました。このドラマは、リモートワークという制約を逆手にとり、物理的な距離を超えた人間関係の温かさを描いた、全5話、1話わずか2分のショートドラマです。

物語の発端は、ある間違い電話。在宅勤務中のOL、田中くみ子（桜庭ななみ）が、ドアノブの故障で部屋に閉じ込められ、修理業者に電話をかけます。しかし、電話に出たのは休業中の居酒屋店長、常林浩也（松下洸平）でした。

この思いがけない出会いから、くみ子と常林はリモートで繋がり始めます。最初はぎこちなかった2人ですが、オンライン晩さん会を開いたり、くみ子のファッションショーを企画したりするうちに、次第に距離を縮めていきます。

2人は、それぞれが抱える孤独や不安を打ち明けるようになります。不要不急の仕事に悩むくみ子、閉店の危機に瀕する居酒屋を経営する常林。彼らが共有するのは、コロナ禍における閉塞感と、将来への不透明な不安です。しかし、そんな中でも、2人は互いを励まし合い、希望を見出そうとします。離れていても、心は繋がっている。このドラマは、そんな力強いメッセージを視聴者に伝えます。

『ホーム・ノット・アローン』の制作背景にも注目です。在宅勤務の困難さを実感した若手ディレクターの企画から生まれたこのドラマは、コロナ禍で孤独感を抱える多くの人々に寄り添う作品を目指しました。スタッフは『スカーレット』などの制作陣が中心となり、出演者も同ドラマに出演経験のある桜庭ななみと松下洸平が抜擢されています。

撮影はわずか1日、完全リモートで行われました。出演者自身がカメラを操作し、照明や小道具の配置なども自ら行うという、従来のドラマ制作とは異なる手法がとられました。そのため、照明のミスや、予想外の影の映り込みなど、リモートならではのハプニングもありましたが、それらもまた作品の魅力の一つとなっています。

音楽にはビートルズの楽曲が使用され、短い尺ながら、多くの視聴者の心を掴みました。さらに、放送と連動したプロローグやショート動画をSNSで発信するなど、新しい試みが数多く取り入れられました。

『ホーム・ノット・アローン』は、短い尺ながら、コロナ禍における人間関係の温かさ、そして希望を鮮やかに描いた、忘れられない作品です。リモート制作という制約の中で生まれた、新たなドラマ表現にも注目です。

主な登場人物

田中くみ子（29）：アパレル会社OL、在宅勤務中。桜庭ななみ
常林浩也（34）：居酒屋店長、休業中。松下洸平

スタッフ

作：桑原亮子
演出：泉並敬眞
制作・著作：NHK大阪拠点放送局

放送情報

2020年5月18日～22日：NHK総合（関西地域）20時42分～20時44分
* 完全版：2020年5月23日 NHK総合（関西地域）、5月31日 NHK総合（全国放送）

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