ホーリー・ローラー (アメリカンフットボール)

ホーリー・ローラー（Holy Roller）

「ホーリー・ローラー」とは、1978年9月10日にサンディエゴ・スタジアムで行われたNFLのオークランド・レイダースとサンディエゴ・チャージャーズの一戦において、試合の結末を劇的に変えた一連のプレイを指します。このプレイ中、ボールが転々と転がった様子や、その後のルールの解釈を巡る議論から、「聖なる転がり」を意味するこの名称で呼ばれるようになりました。実況を担当したビル・キング氏によってこの名前が付けられ、NFL史に残る有名な一幕となっています。

試合の背景

この試合は、AFC西地区のライバル同士である両チームにとって重要な一戦でした。特にレイダースは、チャージャーズに対して過去22戦で18勝を挙げており、1972年から1977年にかけては10連勝中という圧倒的な優位を保っていました。しかし、この日の試合はチャージャーズが優位に進め、第4クォーター残り12分42秒の時点で、チャージャーズが20対7と大きくリードしていました。その後、レイダースはQBケン・ステイブラーからモリス・ブラッドショーへの44ヤードのタッチダウンパスで20対14と追い上げますが、チャージャーズは時間を長く使う攻撃を展開。レイダースが再び攻撃権を得たのは、自陣20ヤードライン、残り時間わずか1分7秒という絶体絶命の状況でした。

劇的なプレイ

試合残り時間10秒、スコアは20対14でチャージャーズがリードし、レイダースはチャージャーズ陣14ヤードラインで攻撃していました。QBステイブラーはスナップを受けると、サックを避けようとしてボールをファンブルしてしまいます。ボールは地面を転がり、エンドゾーン方向へ向かいました。このボールをレイダースのRBピート・バナザックが12ヤードライン付近でリカバーしようとしますが、ボールを確保できずにさらに前方へ転がしてしまいます。続いてレイダースのTEデイブ・キャスパーがこのボールをキャッチしようと試みますが、一度は取り損ねます。しかし、転がってエンドゾーンに到達したボールをキャスパーがようやく押さえることに成功。これがタッチダウンと判定され、同点となりました。キッカー、エロール・マンのエクストラポイントも成功し、レイダースは21対20で逆転勝利を収めたのです。

判定とルールの論争

この一連のプレイ、特にバナザックとキャスパーがボールを前方に転がしたことについて、ルール上のペナルティ（意図的なフォワードラテラルパス）にあたるのではないかという疑問が呈されました。しかし、試合を裁いたオフィシャルは、これらのアクションは意図的にボールを前へ向けたものではなく、結果的にボールが転がったものであり、ペナルティにはあたらないと判断しました。NFLもこの現場の判定を支持し、ステイブラーのファンブルは前に投げようとしたパスの失敗であったと認定しました。ところが、試合後にステイブラー自身が、実際には意図的にボールをファンブルしたことを認めるかのような発言をしたことで、この判定に対する論争はさらに深まりました。

その後の影響

「ホーリー・ローラー」プレイが発生したことがきっかけとなり、NFLではシーズンオフにルール改正が行われました。改正されたルールでは、前後半の「ツーミニッツウォーニング」以降に発生したファンブルについて、最初にファンブルした攻撃側の選手以外の選手がボールを確保して前進することを原則として認めないことになりました（他の選手がリカバーした場合、ボールはファンブルした地点に戻される）。このルール変更は、今回のような意図的とも取れるファンブルとその後の処理によって、試合終盤に大きく状況を有利に進めることを防ぐ目的で導入されました。

「ホーリー・ローラー」は、その劇的な展開と、ルールの解釈、そしてその後のルール改正にまで影響を与えたという点で、NFLの歴史において特異な、そして非常に有名なプレイとして語り継がれています。

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