ボアブディル

ムハンマド11世（ボアブディル）の生涯

概要

ムハンマド11世（アラビア語: أبو عبد الله محمد الثاني عشر‎、ボアブディル）は、1460年頃に誕生し、1527年に生涯を終えたナスル朝の最後の君主です。彼の在位期間は主に1482年から1492年までであり、この時期はグラナダ王国の運命を大きく左右しました。通称ボアブディルは、彼の名に由来するものであり、「エル・チコ」という愛称でも知られています。これらの称号は、彼の小柄な体格や不運な運命を象徴しています。

反乱と偽王位

1482年、ムハンマド11世は父ムレイ・アブル・ハッサンとの間に対立が生じ、グラナダの王位を自称します。父と叔父ムハンマド12世との抗争が続き、彼は自身の立場を確保しています。在位初期にはカスティーリャ王国に対して侵攻を試みましたが、1483年にルセーナの戦いで捕虜となります。この戦いは彼にとって大きな転機となり、彼は解放を条件にグラナダをカスティーリャとアラゴン王国の属国へとしました。

グラナダの滅亡とその影響

その後も父および叔父との抗争は続き、最終的に1491年にカトリック両王とグラナダ降伏に関する協定に調印。この結果、1492年の1月2日にムハンマド11世は象徴的にアルハンブラ宮殿の鍵をカトリック両王に引き渡しました。この出来事をもってナスル朝は滅亡し、ムハンマド11世はグラナダの王としての地位を失います。

追放後の人生

王国を失ったムハンマド11世は追放され、アフリカへ向かいます。アフリカに向かう前に、彼はグラナダの美しい風景を忘れずにいるため、山の上から故国を見渡すという伝説が残っています。その伝説によると、彼が立っていた場所は現代のプエルト・デル・ススピロ・デルモロとされています。アフリカでは戦いに挑みますが、最終的には戦死したと言われています。

歴史的意義

ムハンマド11世の一生は、スペインの歴史における重要な転換期を象徴しています。彼の指導の下でのナスル朝の衰退は、レコンキスタ（再征服運動）の最終段階と重なり、イスラム教徒の影響がスペインから消え去る契機となりました。彼の物語は多くの文献や伝説に取り上げられ、時代を超えて語り継がれています。

参考文献

• - Chisholm, Hugh. (1911). "Boabdil" Encyclopædia Britannica, 11th ed.
• - Wood, James. (1907). "Boabdil" The Nuttall Encyclopædia.
• - 関哲行、立石博高、中塚次郎 編『世界歴史大系 スペイン史 1』山川出版社、2008年。

関連項目

• - スペインの歴史
• - レコンキスタ
• - グラナダ戦争

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