アラゴン王国

アラゴン王国：地中海に広がった栄光と統合への道

アラゴン王国は、中世後期のイベリア半島北東部、現在のスペインのアラゴン州を中心とした王国でした。その歴史は、11世紀初頭、ナバーラ王サンチョ3世による領土分割に端を発します。サンチョ3世は、イベリア半島北部に勢力を拡大した強力な王であり、その死後、広大な領土は息子たちによって分割されました。その中で、アラゴン川流域を支配した庶子ラミロ1世がアラゴン王となり、王国が成立しました。

レコンキスタと勢力拡大

アラゴン王国は、レコンキスタ（再征服運動）の進展とともに勢力を拡大していきます。1118年には、アルフォンソ1世がイスラム教徒の支配下にあったサラゴサを奪取し、これを首都としました。このサラゴサ攻略は、アラゴン王国の発展における重要な転換点となりました。アラゴン王国はエブロ川流域へと勢力を拡大し、イベリア半島北東部におけるキリスト教勢力の重要な拠点となっていきました。

カタルーニャとの連合と地中海進出

アラゴン王国は、カタルーニャとの連合によってさらに強大化します。カタルーニャは、カロリング朝時代のフランク王国の辺境伯領として成立した地域で、独自の文化と歴史を持っていました。アラゴン王家とバルセロナ伯家（カタルーニャを支配していた）は通婚を重ね、1137年にアラゴン女王ペトロニーラとバルセロナ伯ラモン・バランゲー4世の結婚によって両家は連合しました。これは、アラゴン連合王国と呼ばれる同君連合の成立を意味します。この連合により、アラゴン王国は地中海の貿易や文化に深く関与するようになりました。

ハイメ1世は、1229年にバレアレス諸島を征服し、1238年にはバレンシア王国を制圧しました。これらの征服によって、アラゴン連合王国の勢力は地中海へと大きく広がり、バルセロナは地中海交易の中心地として発展しました。1282年のシチリアの晩鐘事件では、アラゴン王ペドロ3世がシチリア王として迎え入れられ、アラゴン王家はシチリア島を支配することとなりました。サルデーニャ島を巡ってジェノヴァ共和国と争ったり、アルモガバルスと呼ばれるアラゴン・カタルーニャの傭兵たちがアテネ公国を一時支配したりするなど、地中海世界で大きな影響力を持つようになりました。

ナポリ王国の獲得とカスティーリャとの連合

15世紀には、アラゴン王アルフォンソ5世がナポリ王国を征服し、一時的に「両シチリア王」を名乗るなど、イタリア半島にも影響力を持つようになりました。しかし、アルフォンソ5世の死後、ナポリ王国の帰属をめぐって複雑な争いが起こり、最終的にはアラゴン王家の支配下に落ち着きました。

1469年、アラゴン王太子フェルナンドとカスティーリャ王女イサベルの結婚により、両王国は同君連合を結び、スペイン王国が成立しました。この連合は、アラゴン王国の歴史に大きな転換点をもたらしました。カスティーリャ王国の方が国力では勝っており、アラゴン王国は徐々にカスティーリャの影響下に置かれるようになりました。1492年には、グラナダ王国が征服され、イベリア半島におけるレコンキスタが完了しました。同年、コロンブスがアメリカ大陸を発見したことで、スペインの勢力圏は新大陸へと広がっていきました。しかし、新大陸への進出は主にカスティーリャ人によって担われ、アラゴン王国、特にカタルーニャは地中海における活動を続けました。しかし、新大陸への進出を主導したカスティーリャの台頭は、地中海に重心を置いていたアラゴン王国の地位を相対的に低下させることになりました。

衰退と統合

スペイン王国成立後は、カスティーリャ王国中心の統合が進み、アラゴン王国は次第にその独立性を失っていきます。18世紀初頭には、スペイン・ブルボン朝による中央集権化政策によって、アラゴン王国の独自の政治機構は解体され、かつての栄光は過去のものとなりました。アラゴン王国は、地中海を舞台に活躍した輝かしい歴史を持ちますが、最終的にはカスティーリャとの統合という歴史的流れの中で、その独立性を失い、スペイン王国の一部として統合されていきました。

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