ボイリング・ポイント/沸騰

ボイリング・ポイント/沸騰：クリスマス前夜のレストランで繰り広げられる人間ドラマ

2021年公開のイギリス映画『ボイリング・ポイント/沸騰』（原題：Boiling Point）は、ロンドンの高級レストランを舞台に、クリスマス前の金曜日、オーナーシェフとその従業員たちが直面する様々な問題を描いた90分間の緊迫感あふれるドラマです。本作最大の特徴は、ほぼワンカットで撮影されている点にあります。この大胆な演出により、観客はまるでレストランの中にいるかのような臨場感を体験することができます。

物語：多忙な厨房、そして崩壊寸前のオーナーシェフ

主人公は、ロンドンで人気の高級レストランのオーナーシェフ、アンディ・ジョーンズです。しかし、彼は私生活で大きな問題を抱えています。妻子と別居し、アパートも見つからず、レストランの事務所で寝起きする日々を送っているのです。睡眠不足で疲労困憊のアンディは、息子との面会約束もすっぽかしてしまう始末。

そんな中、クリスマス前、一年で最も忙しい金曜日に、レストランはさらなる試練に見舞われます。まず、保健所の査察が入ると、アンディの書類作成の怠慢により、これまで維持してきた衛生評価が最高評価の5点から3点にまで下がってしまいます。スタッフたちは落胆し、アンディの責任を問います。

さらに、アンディの元同僚で有名シェフであるスカイが、愛人のグルメ評論家と共に来店します。二人の間には確執があり、スカイはアンディの料理や経営手腕を辛辣に批評。アンディは常に酒を飲み続け、精神的に追い詰められていきます。

有能なスーシェフ、カーリーは店の運営を支えていますが、彼女は他のレストランからの引き抜きの話を受けており、昇給を要求していました。しかし、アンディはそれを無視し、問題を先延ばしにしてしまいます。

そして、スカイはアンディから過去に融資した20万ドルの返済を要求。返済できない場合、アンディのレストラン経営に加わることを主張します。さらに、客の一人がアレルギー反応を起こし、救急車で運ばれる事態が発生。アンディのアレルギー表示の確認ミスが原因でした。

責任を問われることを恐れたスカイは、無実のスーシェフであるカーリーに責任を転嫁しようと提案します。それを知ったカーリーは激怒し、他店への移籍を決意します。精神的に限界に達したアンディは、事務所で麻薬を使用し、妻に電話をして謝罪。リハビリ施設に通うことを約束しますが、厨房に戻る途中に倒れてしまいます。

キャストと評価

本作には、スティーヴン・グレアム、ヴィネット・ロビンソン、ジェイソン・フレミングなど、実力派俳優たちが多数出演しています。彼らの熱演によって、登場人物たちの感情や葛藤がリアルに表現されています。

Rotten Tomatoesでは71件のレビューのうち99%が高評価で、平均点は10点満点中7.9点と高い評価を得ています。Metacriticでも平均点が73点と、批評家からの評価は非常に高いです。

テレビシリーズ化

映画の大成功を受けて、BBCでは映画の続編として全5話のテレビシリーズが製作されました。映画のエンディングから半年後を舞台に、スーシェフだったカーリーが自身のレストランで料理長を務めるまでの物語が描かれています。映画とは異なりワンカットではありませんが、映画と同様にリアルな描写で高い評価を得ています。

まとめ

『ボイリング・ポイント/沸騰』は、緊迫感あふれる展開と、リアルな人間ドラマで高い評価を得た作品です。ワンカットという大胆な演出と、素晴らしい演技によって、観客はレストランの厨房という閉鎖的な空間で繰り広げられる人間模様に引き込まれます。映画を超えた成功を収めたテレビシリーズにもご注目ください。

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