ボクシングの技術

ボクシングの技術

ボクシングは、単にパンチを繰り出すだけでなく、高度な技術と戦略が求められる格闘技です。ここでは、ボクシングで用いられる主要なテクニックを、防御技術、防御スタイル、パンチ技の３つのカテゴリーに分けて解説します。

防御技術

ボクシングにおける防御は、相手の攻撃をかわし、反撃の機会を生み出すために不可欠です。以下に代表的な防御技術を解説します。

ボブアンドウィーブ

ボブアンドウィーブは、頭部を左右に動かしながら、相手のパンチの下をくぐるように避けるテクニックです。相手のパンチが届く瞬間に、膝を曲げて体を左右に移動させます。パンチをかわした後、体を起こしながら、相手の腕の外側または内側に移動します。外側への移動は「外側へのボビング」、内側への移動は「内側へのボビング」と呼ばれます。

パリー/ブロック

パリーは、相手のパンチを手のひらで払い、コースをそらす防御技術です。相手のパンチが届くと、手首または前腕を横に打ち、パンチの軌道を変えます。ブロックは、相手のパンチを前腕で受け止める防御方法です。どちらも相手の攻撃を無効化し、反撃のチャンスを作り出します。

ストッピング

ストッピングは、相手のパンチを手のひらで受け止める技術で、「キャッチ」とも呼ばれます。ブロックや下方向への受け流し（パリー）としても使え、相手の攻撃を止める際に有効です。

カバーアップ

カバーアップは、相手の攻撃から身を守るための最後の手段です。頭部と顎を守るために両手を高く上げ、前腕を体に密着させてボディへの攻撃を防ぎます。ボディを保護する際は、腰を回転させてパンチを「ロール」させ、頭部を守る際は、両拳を顔の前に押し当て、前腕を平行に外側に向けます。下からの攻撃には弱いという弱点があります。

クリンチ

クリンチは、相手との距離が接近し、ストレートパンチが使えなくなった際に用いられるテクニックです。両手で相手の肩の外側から腕を抱え込み、動きを封じます。クリンチは一時的な状態であり、審判によってすぐに解除されます。

スウェーバック

スウェーバックは、体を後ろに傾けることで、相手のパンチをかわすテクニックです。主に頭部への攻撃を避けるために用いられます。

ウィービング

ウィービングは、頭や上体を左右に動かすことで、相手に的を絞らせない防御技術です。相手のパンチをかわしながら、反撃のチャンスを探ります。

ダッキング

ダッキングは、上体を前に屈めることで、相手のパンチをかわすテクニックです。顔面へのストレートやフックを回避する際に用いられますが、アッパーもかわすことができます。また、ボディへの攻撃につなげる場合にも用いられます。アマチュアボクシングでは、上体を前に倒すと反則になる場合があります。

パーリング

パーリングは、手のひらやグローブを使って、相手のパンチを弾いたり、叩き落としたりする防御技術です。

防御スタイル

ボクシングでは、3つの主要な防御スタイルがあります。これらのスタイルは、ボクサーの体格、戦術、得意な攻撃などに合わせて調整されます。

ピーカブースタイル

ピーカブースタイルは、両腕を顔の前で揃える防御スタイルです。顔面への防御力が高まる一方、ボディへの防御が手薄になります。マイク・タイソンのスタイルとして有名で、伝説的なトレーナー、カス・ダマトによって開発されました。リラックスした手で顔を保護し、左右へのヘッドムーブメント、ボビング、ウィービングを組み合わせ、相手の死角をつくことを特徴としています。インファイター向けの防御スタイルであり、ボボ・オルソンなどの名選手が用いました。

クロスアーム

クロスアームは、前腕を顔の前で水平に重ねる防御スタイルです。片方の腕のグローブがもう片方の腕の肘の上に来るように構え、頭部へのダメージを軽減します。特にバックハンドが垂直に上がることで効果を発揮します。頭部への攻撃は防ぎやすい一方、ボディが開きやすいという弱点があります。

フィリー・シェル/ショルダー・ロール

フィリー・シェル（ショルダー・ロール）は、クロスアームの変形とも言える防御スタイルです。リードハンドは胴体に沿って配置し、バックハンドは顔の側面に置きます。リード側の肩を顔に引き寄せることで、相手のパンチを滑らせ、カウンターを狙います。このスタイルは、カウンターパンチを得意とする選手によく用いられますが、運動能力と経験が求められます。静止していると弱点が露呈するため、常に動き続けることが重要です。

パンチ技

ボクシングにおけるパンチは、攻撃の要です。ここでは、主要なパンチ技について解説します。

ジャブ

ジャブは、リードハンドで繰り出す素早いストレートパンチです。体の側面から伸び、体を横切らず、小さな回転運動を伴います。拳は水平になり、顎を守るためにリード側の肩が上がります。ジャブは、相手との距離を測ったり、防御を調べたり、より強力なパンチの布石として使われます。また、防御にも有効で、フックやアッパーカットなどの強力なパンチを妨害することもできます。

クロス

クロスは、バックハンドで繰り出す強力なストレートパンチです。体を横切るように打ち込み、後方の肩を前に出し、リードハンドは顎を保護するために顔に引き寄せます。胴体とヒップを回転させることで、威力を増大させます。ジャブに対するカウンターとして、またはワンツーコンボとして使われることが多いです。

フック

フックは、リードハンドで繰り出す半円形のパンチです。肘を曲げて引き、胴体とヒップを回転させて威力を増します。頭部だけでなく、下半身（肝臓）を狙うこともあります。下半身を狙うフックは、「リップ」と呼ばれることもあります。

アッパーカット

アッパーカットは、バックハンドで繰り出す垂直の上昇パンチです。体をわずかに移動させてから、膝と腰の回転を使って、相手の顎やボディを狙います。相手をバランスを崩し、連続攻撃につなげる効果があります。

ボロパンチ

ボロパンチは、腕の振りによって生まれる遠心力を利用したパンチで、奇妙な角度でヒットするため、見た目以上の効果を発揮します。オリンピックボクシングでも時折見られます。

右オーバーハンド

オーバーハンド右は、肩越しに弧を描いて打ち込むパンチで、手のひらが相手と反対側を向くのが特徴です。身長が低いボクサーが、リーチの長い相手を攻略するために有効です。

チェックフック

チェックフックは、突進してくる相手を止めるためのパンチです。通常のフックを繰り出すと同時に、体を回転させて相手の突進をかわし、反撃します。

その他のテクニック

以下に、上記以外にもボクシングで用いられる様々なテクニックを列挙します。

カエルパンチ
ガゼルパンチ
コークスクリュー・ブロー
ジョルトブロー
スリッピング・アウェー
デンプシー・ロール
パンチング
ボディブロー
ワンツーパンチ

参考文献

(英語) AIBA Coach Regulations’ Manual. AIBA. (2010). https://www.aiba.org/coaches2020/ 2021年11月16日閲覧。

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