デンプシー・ロール

デンプシー・ロールとは

デンプシー・ロールは、元世界ヘビー級王者ジャック・デンプシーが考案したボクシング技術です。現在のボクシングでは当たり前となっている前傾姿勢で体重を乗せたパンチは、デンプシーがその先駆けと言えます。彼は、数々のインファイト技術を開発しており、その中でも特に有名なのがデンプシー・ロールです。

当時、小柄だったデンプシーが、自分より大柄な相手を倒す姿を見て、多くのボクサーが彼の技術を習得しようとしました。デンプシー・ロールは、相手がグロッキー状態になった際に、相手の軸の死角に回り込み、左右のウィービングで勢いをつけ、体重を乗せたフックを叩き込むというものです。防御と攻撃を一体化させたこの技術は、重心移動をスムーズに行うことでパンチの威力を格段に高めることができます。

デンプシー・ロールの現状

現在、「デンプシー・ロール」という名称は、プロのボクシング界ではほとんど使われなくなりました。しかし、インファイトを真面目に練習するボクサーであれば、自然と習得できる基本中の基本として、多くのジムで指導されています。デンプシー・ロールは、フックに隙があるため、カウンターで反撃されるリスクもあります。そのため、相手に決定的なダメージを与える場面で使われることが多いです。

日本で最初にデンプシー・ロールを使いこなしたのは、エディ・タウンゼントに指導を受けた藤猛です。藤猛は、この技術を日本のボクシング界に広める上で重要な役割を果たしました。

漫画におけるデンプシー・ロール

デンプシー・ロールが広く知られるようになったきっかけの一つに、森川ジョージの漫画『はじめの一歩』があります。この作品の主人公である幕之内一歩の必殺技として、デンプシー・ロールが登場したことで、ボクシングファン以外にも広く認知されるようになりました。

『はじめの一歩』では、デンプシー・ロールは「上半身を∞の軌道で振り続け、身体が戻ってくる反動を利用した左右の連打」とされています。しかし、作中では「規則正しい振り子運動はカウンターを合わせやすい」という弱点も指摘されています。そのため、物語の進行とともに、幕之内はデンプシー・ロールを進化させ、カウンターのタイミングをずらす技術を身につけます。さらに、筋力トレーニングを重ねることで、「縦回転のデンプシーロール」という新たな形態も編み出しました。

また、デンプシー・ロールは『ナックルNo.1』（1979年）や『はいすくーる仁義』など、他のボクシング漫画にも登場しています。『はいすくーる仁義』では、主人公の安芸情二がデンプシー・ロールを使い、解説者として藤猛の名前も登場しました。

まとめ

デンプシー・ロールは、ジャック・デンプシーが考案した優れたインファイト技術であり、現在のボクシングにも大きな影響を与えています。プロのボクシング界では名称こそ使われなくなりましたが、その技術は基本として広く受け継がれています。また、漫画作品を通して、多くの人々にその名を知られるようになりました。

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