ボタフメイロ

ボタフメイロ：サンティアゴ大聖堂の巨大振り[[香炉]]

ボタフメイロは、スペインのガリシア州、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂に設置された、世界的に有名な巨大な振り[[香炉]]です。サンティアゴ巡礼の終着点として知られるこの大聖堂で、ボタフメイロは特別な儀式に用いられます。

ボタフメイロとは

「ボタフメイロ」とは、ガリシア語で「煙を吐き出すもの」という意味を持ちます。その名の通り、香を焚き、聖堂内を振り子のように大きく揺らすことで、香の煙を広範囲に行き渡らせる役割を果たします。

大聖堂のボタフメイロは、世界最大級の香炉の一つとして知られ、その重さは約80kg、高さは約1.6mにもなります。素材は黄銅の合金と青銅で、表面は20µmの銀メッキで覆われ、金色に輝いています。現在のものは、1851年に金銀細工師のホセ・ロサダによって製作されました。

通常は教会の展示室に保管されていますが、重要な宗教儀式の際には大聖堂に運び込まれ、滑車から伸びるロープに吊り下げられます。この滑車は1604年に設置されたもので、ロープは約20年ごとに交換されています。近年では、以前よりも太いロープが使用されるようになったため、摩擦による摩耗が激しくなり、交換頻度が高まっています。2004年には、当初の予想よりも早くロープの交換が行われました。2004年以前は、麻やエスパルトと呼ばれる草で作られたロープが、スペイン西部の都市ビーゴで作られていましたが、2004年以降は人工繊維が使用されています。

また、ボタフメイロの他にも、「La Alcachofa」（アーティチョーク）または「La Repollo」（キャベツ）と呼ばれる銀色の吊り香炉があり、ミサの種類によっては、こちらが使用されることもあります。これは1971年にマドリードのルイス・モリーナ・アセド工房で製作されました。

儀式の様子

ボタフメイロやAlcachofaには、約40kgの炭と香がシャベルで充填されます。ロープは、香炉が外れないように複雑な結び方で固定されます。儀式では、まず人力で香炉を押し出すことから始めます。「Tiraboleiros」と呼ばれる赤いローブを着た8人の男性がロープを引っ張ると、香炉は徐々に大きく揺れ始め、翼廊の天井近くまで達するほどの高さになります。その速度は時速約68kmにも達し、香の煙が大聖堂全体に広がります。

スイングの頂点では、ボタフメイロは約21mの高さまで上がり、翼廊の両端にほぼ届く約65mの弧を描きます。最大角は約82°。最大の振り幅に到達するのは、開始から約80秒後、およそ17サイクル目です。

この儀式には毎回約250€の費用がかかりますが、その荘厳な光景を一目見ようと、多くの巡礼者や観光客が訪れます。

歴史

ボタフメイロの起源は11世紀に遡ると伝えられています。当時、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂に到着する巡礼者は、疲労困憊し、不衛生な状態であることが多かったため、伝染病の予防として、香が用いられたと考えられています。

13世紀には滑車の機構が改良され、振り幅が大幅に拡大しました。それまで約1.5m程度だったものが、Tiraboleirosがロープを引くことで、よりダイナミックな動きが可能になりました。

15世紀には、フランス王ルイ11世が教会に寄付を行い、1554年には新しい銀の香炉が導入されました。しかし、この香炉はスペイン独立戦争中の1809年4月に、ナポレオン軍によって略奪されてしまいました。現在のボタフメイロは、1851年にロサダによって製作されたものです。

2006年には、使用開始から155年を経て、大規模な修復が行われ、へこみや亀裂の修復、銀の再メッキなどが施されました。

事故

過去には、ボタフメイロの揺れによって、いくつかの事故が発生しています。ロープから外れるのを防ぐため、フック付きのロープが使用された時期もあったようです。

特に有名なのは、キャサリン・オブ・アラゴンが訪問した際の事故です。1499年、アーサー王太子との結婚のために旅をしていた彼女が大聖堂を訪れた際、ボタフメイロが聖堂の高窓を突き破って飛び出してしまいました。幸い、この事故による人的被害はありませんでした。

1622年、1925年、1937年には、ロープとボタフメイロを繋ぐ器具が破損する事故が発生しています。1622年には、ボタフメイロがTiraboleirosの近くに落下しました。1937年7月には、ボタフメイロが落下し、燃えている炭が地面に散乱する事故も起きています。

現在では、事故防止のため、「セイラーズノット」と呼ばれる結び方で、ボタフメイロがロープに固定されています。

ボタフメイロの重量

ボタフメイロの重量については、報告によって数値にばらつきがあります。これは、様々な儀式で使用され、その内容によって香の量が異なるためと考えられます。報告されている重量の例は以下の通りです。

87 kg
50 kg
53 kg
80 kg
60 kg
160 kg

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