ボニファシウス・アメルバッハの肖像

ボニファシウス・アメルバッハの肖像

『ボニファシウス・アメルバッハの肖像』は、ドイツ・ルネサンス期の著名な画家ハンス・ホルバインによって描かれた絵画で、松板上に混合技法で制作されています。この作品は、縦29.9センチ、横28.3センチというサイズで、ホルバインの初期の作品の一つとして知られています。描かれているモデルは、当時著名な学者ボニファシウス・アメルバッハであり、彼の学問的な成果や人間性を表現する重要な作品となっています。現在、この肖像画はバーゼル市立美術館に展示されています。

ボニファシウス・アメルバッハとは

ボニファシウス・アメルバッハは、バーゼルおよびフライブルクで法学と古代学を学び、1520年にはアヴィニョンに赴き学問を深めました。その後、重要な教育機関であるバーゼル大学でローマ法を教える職に就きました。アメルバッハの学問における地位は、思想家デジデリウス・エラスムスとの親交によっても強調され、エラスムスは彼を唯一の後継者に指名しました。その後、アメルバッハはホルバインの作品の熱心なコレクターとなり、彼の息子バジリウスも同様にホルバインの作品を収集し、アメルバッハ収集室に展示されることとなりました。

作品の背景と特徴

本作は、1519年にアメルバッハがアヴィニョンに向かう前に依頼したもので、彼の死後に家族に受け継がれる記念とするために制作されました。ホルバインはルツェルンからバーゼルに戻ったばかりの時期にこの作品を描き、アメルバッハとの密接な協力の下で進められました。肖像画の左側には、ホルバインへの賛辞を含むラテン語の銘文があり、これに対するアメルバッハの注釈もバーゼル大学図書館に保管されています。

アメルバッハは自身による注釈を慎重に行い、首の周りにある言葉「Picta licet」は再度紙片に書かれ、20回も注釈が施されています。元々の6行の詩も作成されましたが、最終的には3つの表現形式に絞られました。この注釈は、同じ色合いのインクで書かれており、彼が1日でこれを完成させたことが示唆されています。ホルバインがこの肖像の中に称賛の言葉を入れたのは、彼の作品の中では初めての試みであり、後の作品においても類似の手法が見られます。

アメルバッハの右側にはイチジクの木が描かれ、背景には雪をかぶった山々が広がっています。また、銘文に記された1519年10月14日は、彼の誕生日にあたります。これは、ホルバインがバーゼルの画家ギルドの一員として制作した最初期の作品の一つでもあります。従前の彼は、ガラスや書物の装飾を主な仕事にしていました。

後の経歴と展示

この肖像画は、アメルバッハの収集室に所蔵された後、1666年にバーゼル市とバーゼル大学に購入されました。その後、バーゼル大聖堂近くに展示される時期もありましたが、現在は1936年にオープンしたバーゼル市立美術館に展示されています。この美術館では、作品の魅力を多くの訪問者に伝える場として引き続き重要な役割を果たしています。

正確な歴史に根ざしたこの肖像画は、ホルバインの芸術的才能とアメルバッハの学識を結びつけ、当時の文化的背景を体現した作品となっています。

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