ボライソーシリーズ

海の男たちの物語：アレグザンダー・ケント『ボライソーシリーズ』

アレグザンダー・ケント（ダグラス・リーマン）による『ボライソーシリーズ』は、リチャード・ボライソーという一人の架空のイギリス海軍士官の生涯を軸に、18世紀後半から19世紀初頭にかけての海洋冒険を描いた壮大な物語です。ハヤカワ文庫から「海の勇士 リチャード・ボライソー」として邦訳され、高橋泰邦氏による翻訳で日本の読者にも親しまれています。

時代を航海する物語

このシリーズの魅力は、アメリカ独立戦争、ナポレオン戦争、米英戦争といった歴史的な出来事を背景に、当時のイギリス海軍の様子を克明に描写している点にあります。帆船時代の海戦の迫力、海軍内部の人間関係、そして主人公リチャード・ボライソーの成長を通して、読者はまるでその時代にタイムスリップしたかのような感覚を味わうことができます。

著者：アレグザンダー・ケントとは

アレグザンダー・ケントは、実は第二次世界大戦物の戦記小説作家であるダグラス・リーマンが、海洋冒険小説を執筆する際に用いたペンネームです。豊富な知識と卓越した筆力で、海洋冒険小説という新たなジャンルでも才能を発揮しました。

主な登場人物

リチャード・ボライソー：シリーズの主人公。1756年生まれ。海軍一家に育ち、1768年に海軍に入隊。卓越した才能と勇気で頭角を現し、最終的には海軍大将にまで上り詰めます。
トマス・ヘリック：ボライソーの親友であり、頼れる右腕。初登場時は三等海尉でしたが、後に海軍少将に昇進し、ボライソーを支え続けます。
ジョン・オールデー：ボライソーの艇長。忠実な部下として、常にボライソーをサポートします。
バレンタイン・キーン：士官候補生から勅任艦長へと成長。ヘリックの後を継ぎ、ボライソーの旗艦艦長を務めます。最終階級は海軍中将。
ジョン・ニール：士官候補生から勅任艦長へと成長。
フランシス・インチ：海尉から勅任艦長へと成長。
ヒュー・ボライソー：リチャードの兄。不運な出来事から脱走し、アメリカ独立戦争ではアメリカ側として戦うという宿命を背負います。
アダム・パスコー：ヒューの息子で、リチャードの甥。後にアダム・ボライソーと改名し、リチャードの士官候補生として海軍に入隊。リチャード戦死後、シリーズの主人公となります。
ジェームズ・タイアック：海尉艦長。リチャード・ボライソーの旗艦艦長を務めます。

作品一覧

ハヤカワ文庫版のシリーズは、執筆順ではなく、小説の年代順に刊行されています。各巻では、ボライソーの乗艦や活躍する海戦が異なり、それぞれ独立した物語としても楽しめます。

原書名、和書名、シリーズ番号、乗艦名などは割愛します。

海洋冒険小説の世界へ

『ボライソーシリーズ』は、海洋冒険小説の魅力を余すところなく伝えてくれる作品です。帆船時代の海軍の様子、登場人物たちの人間ドラマ、そしてスリリングな海戦描写は、読者を飽きさせることなく、物語の世界へと引き込みます。海洋冒険小説に興味がある方はもちろん、歴史小説や軍事小説が好きな方にもおすすめのシリーズです。

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