ボルクヴァルトIV

ボルクヴァルトIV：ドイツ軍の遠隔操作式爆薬運搬車輌とその系譜

ボルクヴァルトIV（Borgward IV、またはB IV）は、第二次世界大戦下のドイツ軍が運用した、無線操縦もしくは有人操縦が可能な遠隔操作式爆薬運搬車輌です。全装軌式の「ゲパンツァーター・ムニッチオーンツシュレッパー（装甲弾薬運搬車）」として分類され、ゴリアテ無人爆薬運搬車の拡大版と言える兵器でした。本稿では、その前身であるB I、B II、B IIIについても合わせて解説します。

概要：多様な役割を担った装軌車輌

ボルクヴァルトIVは、450kgの爆薬を搭載し、敵陣や地雷原に接近。前面装甲上に設けられた傾斜した投下部に搭載された爆薬を滑り落とすことで、目標を破壊しました。本体は安全距離まで後退した後、爆薬を起爆させる設計でした。爆薬運搬車の役割に加え、小型の装軌式運搬車として物資の輸送や、パンツァーシュレック対戦車ロケット弾発射筒を搭載した対戦車車両「Panzerjäger Wanze」としても運用されました。その汎用性の高さは、戦況の激しさの中で重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

開発：第一次世界大戦からの技術的蓄積と試行錯誤

無線・有線による誘導兵器の開発は、第一次世界大戦期からドイツで行われていました。しかし敗戦により中断された開発は、その後、フランスにおける「陸上魚雷」と呼ばれる自走兵器の開発や、1937年のポンメレットによる無線誘導式自爆兵器「VP」の開発など、欧州各国で着々と進展していきました。

ドイツでは1939年11月、ボルクヴァルト社が地雷除去のための無人誘導車輌「B I」の開発に着手。コンクリート製の車体に木製転輪という簡素な構造でしたが、実戦には投入されませんでした。改良型である「B II」は爆薬搭載量を増やしましたが、信頼性の問題から量産には至りませんでした。

一方、1937年には、汎用性の高い小型装軌車の開発も開始されていました。これは弾薬輸送や各種小型火砲の運搬を目的としたもので、「VK.3.01」として試作車が製造されました。その後、改良型の「VK.3.02」も開発されましたが、生産中止の決定が下され、最終的には67両が製造されるにとどまりました。 このVK.3.01、VK.3.02がB IIIの原型となりました。

1941年10月、ボルクヴァルト社は、再利用可能な爆薬運搬車輌の開発を命じられます。これがB IVの開発につながりました。B I、B IIと異なり、使い捨てではなく、目標地点まで有人操縦を行い、目標付近で操縦手が脱出した後、無線操縦に切り替えるという方式が採用されました。

バリエーション：用途に合わせた多様な形態

ボルクヴァルトIVには、A型、B型、C型という複数のバリエーションが存在します。A型は初期生産型で、操縦席の防護が不十分だったため、改良が加えられたB型、装甲を強化したC型と発展していきました。また、B IVを基に、パンツァーシュレック対戦車ロケット発射筒を搭載した対戦車車両「Panzerjäger Wanze」も開発されました。

さらに、VK.3.02の車台を用いた対戦車自走砲や、VK.3.01を用いた自走無反動砲も試作されましたが、これらは量産には至りませんでした。

性能諸元：各バリエーションの比較

各バリエーションの性能諸元は、装甲厚、エンジン出力、搭載火器などにおいて差異が見られます。特に、装甲厚はA型からC型にかけて段階的に強化されており、戦闘における生存率の向上を目指した改良が施されていることがわかります。

結語：戦況の激しさの中で生み出された兵器

ボルクヴァルトIVとその前身は、ドイツ軍の技術開発における試行錯誤と、戦況の激しさの中で求められた兵器開発の軌跡を示すものです。無人爆薬運搬車から対戦車車両まで、その多様な運用方法は、当時におけるドイツ軍の戦略と戦術を反映していると言えるでしょう。これらの兵器の開発は、近代戦における兵器開発の複雑さと困難さを改めて示す貴重な事例となっています。様々な改良が加えられ、実戦配備されたボルクヴァルトIVは、第二次世界大戦における特殊車両の開発史において重要な位置を占める存在と言えるでしょう。

もう一度検索