ボルトカッタ

ボルトクリッパ：鉄筋や針金を切る万能工具

ボルトクリッパは、建設現場や工場などで、鉄筋、針金、ボルト、チェーンなどを切断するために広く使われている手動工具です。JIS規格では「ボルトクリッパ」と表記されますが、プロの間では「クリッパ」と呼ばれることも多く、その高い汎用性から、多くの現場で愛用されています。

ボルトクリッパの仕組み：てこの原理と刃の構造

ボルトクリッパは、てこの原理を巧みに利用することで、小さな力で大きな切断力を生み出します。ハンドルにかかる小さな力が、刃の部分で何十倍にも増幅され、太い鋼材でも容易に切断することが可能です。

主要な構成要素は、刃とハンドルです。刃の調節機構、刃の形状、座金の形状などは、いくつかの種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。製造メーカーによって、これらの設計が異なり、多様なタイプのボルトクリッパが市場に存在します。

刃の調節機構：切れ味を維持するために

ボルトクリッパの刃は、本来、座金から刃先まで隙間なく密着していることが理想です。しかし、使用による摩耗や金属疲労によって、刃の間に隙間が生じることがあります。

この隙間は、細い針金や軟らかい材料の切断を困難にします。そこで、多くのメーカーは、刃の隙間を調整する機構を備えています。主な調整方法は大きく2種類あり、刃部で調整を行うタイプと、本体部で調整を行うタイプです。

刃部調整タイプは、刃と座金を固定するボルトを調整することで、刃の位置を微調整します。この方式は、刃全体の隙間を調整するのに有効です。一方、本体部調整タイプは、本体部分の機構を調整することで、刃の隙間を調整します。しかし、片側のみ調整するタイプでは、刃の中心線と本体の中心線がずれてしまい、ハンドルを開いたときに刃が偏るという欠点があります。

刃の形状：用途に合わせた選択

ボルトクリッパの刃には、「センタカット（両刃）」と「クリッパカット（片刃）」の2種類があります。センタカットは、刃の強度が高く、硬い材料や太い材料の切断に適しています。一方、クリッパカットは、切断面が平坦になりやすく、障害物の近くでも切断しやすいのが特徴です。

また、刃先の形状も重要です。切断時の負担を軽減するために、刃先には平面部が設けられています。しかし、硬い材料を切るための刃は、平面部の幅が大きく、刃の強度を高める設計となっています。

座金：刃を支え、耐久性を高める

座金は、左右の刃を支える重要な部品です。一般的なカッティングプライヤーとは異なり、ボルトクリッパの刃は座金によって複支点固定されています。これにより、切断時の横方向の力から刃を守り、刃の歪みや破損を防ぎます。座金の形状や材質は、ボルトクリッパの耐久性や切断能力に大きく影響を与えます。

ボルトクリッパの歴史と材質

初期のボルトクリッパは、鋳造本体に木製ハンドルを組み合わせた構造でしたが、1970年代頃からは、強度と軽量化を両立するため、鍛造本体と鋼製パイプハンドルの組み合わせが主流となりました。

刃の材質も進化を遂げています。かつては炭素鋼が一般的でしたが、刃の破損を防ぐため、現在ではばね鋼が広く採用されています。

切断テクニックと安全対策

ボルトクリッパは、棒鋼や鉄筋だけでなく、角材や亜鉛メッキ鋼線なども切断できます。しかし、硬い鋼材を切断する際は、切断片が飛び散る危険性があるため、安全対策が必要です。切断時には、厚手の布などで刃と材料を覆うなどの対策を行うことをお勧めします。

ボルトクリッパの選び方：サイズと材質

ボルトクリッパは、全長でサイズが規定されています（JIS B 4643）。用途に合わせて適切なサイズを選択することが重要です。近年は、軽量化やデザイン性を重視したアルミ製のボルトクリッパも人気があります。

主要メーカー

国内メーカーには、MCC、HIT、LOBTEX、ARM、KTCなどがあります。海外メーカーには、HKP、RIDGID、KNIPEXなどがあります。各メーカーは、それぞれ独自の技術と特徴を持つボルトクリッパを製造しています。

まとめ

ボルトクリッパは、シンプルながらも高度な技術が詰まった、頼もしい工具です。適切な選び方と安全な使用方法を理解することで、作業効率の向上と安全性の確保に繋がります。様々な種類があるため、用途や予算に合わせて最適な一台を選びましょう。

もう一度検索