ボルドーのミルク売り娘

作品概要

『ボルドーのミルク売り娘』は、スペインの著名な画家フランシスコ・デ・ゴヤによって1827年ごろに描かれた油彩画です。この作品は、彼の晩年にあたるボルドー時代に制作されたもので、印象派に先駆けたとされる鮮明な画風が特徴的です。作品は、ゴヤの特異な人生と時代の対照を表現し、清新さと純粋さを具現化しています。

制作背景

1824年、ゴヤはスペイン王フェルナンド7世の許可を得て、フランス・プロンビエール＝レ＝バンでの湯治を計画しましたが、実際にはボルドーに向かいました。ボルドーでの数週間後、彼はパリを訪れ、亡命していた友人たちと再会し新古典主義やロマン主義の作品に触れました。この期間、彼はしばらく病に悩ましながらも創作に専念しました。

ボルドー時代には、彼の家政婦や愛人とされるレオカディア・ソリーリャとの生活が続き、その中で生まれたと言われる娘ロサリオ・ウァイスも共に過ごしました。この時期に描かれた『ボルドーのミルク売り娘』は、レオカディアかロサリオの肖像であると考えられています。

作品の内容

この作品は、若い女性が物思いに耽っている姿を描写した肖像画です。その女性は髪をスカーフで包み、ショールを纏っています。彼女の膝の上にはエプロンが広げられ、画面左下には牛乳の入った容器が置かれています。背景はぼんやりとした色合いで仕上げられ、女性はラバに乗っているとされていますが、その姿は画面には見えません。

この作品は、観る者に女性の内面の葛藤や静謐さを感じさせます。ゴヤがこの時期に抱いていた人間性への信念が反映されているとされています。その技術的卓越性から、今日ではゴヤの最高傑作の1つとして広く認識されています。

論争と評価

『ボルドーのミルク売り娘』は、広く賞賛されているものの、実際にゴヤが制作したものかどうか疑問視する美術史家もいます。もし本作が真作であれば、描かれているのはレオカディアかロサリオのどちらかである可能性が高いです。

ゴヤの晩年に彼の世話をしていたレオカディアとの関係は不明瞭であり、彼女が単なる家政婦であったのか、あるいは更なる関係が存在したのかについては多くの議論があります。また、ロサリオが後に画家として活動したことから、彼女が本作品を描いたのではという説も存在しますが、その可能性は低いとされています。

来歴

ゴヤの死後、この絵画は彼の子フランシスコに遺贈されましたが、経済的な事情で他者に売却されました。その後、1946年にプラド美術館に寄贈され、現在では同美術館の重要なコレクションの一部として展示されています。作品には、その由来に関して未解決の部分もありますが、訪れる人々に深い感銘を与え続けています。

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