ボルボ・940

ボルボ940：安全性を追求した最後のFRボルボ

1990年から1998年まで製造されたボルボ940は、740の後継車種として登場した4ドアセダンとステーションワゴン（エステート）です。740をベースに、空力性能とデザインの近代化を図り、洗練されたスタイルへと進化を遂げました。特に、ボルボの企業理念である安全性を徹底的に追求した点が大きな特徴と言えるでしょう。

ボディと安全設計

940は、740ターボや760と同様に、スラントノーズを採用することで空力性能の向上を実現しました。セダンモデルではリア部分をハイデッキ化し、開口部をバンパーレベルまで下げることで利便性を高めています。

安全性に関しては、当時の最先端技術を惜しみなく投入しました。全席3点式シートベルトの採用（700シリーズの後席中央は2点式だった）、1992年モデルからのSIPS（側面衝突保護システム）導入による側面衝突安全性の向上、運転席エアバッグ（北米仕様では助手席エアバッグも追加）など、パッシブセーフティの強化に注力しました。さらに、1993年からは後席中央にビルトイン式のチャイルドシートを導入し、ステーションワゴンモデルにも全席3点式シートベルトを採用するなど、安全面での改良はモデル途中まで継続して行われました。

アクティブセーフティ面では、モデル初期からABSを標準装備。後期モデルではヘッドライトワイパーも標準搭載されるなど、あらゆる角度から安全性の向上を図っています。サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リアが5リンクリジット式と、740からのキャリーオーバーとなっています。

エンジンバリエーション

搭載エンジンは、地域によって異なり、直列4気筒2.0～2.3リットルが用意されました。具体的には、SOHCのB200型（2.0リットル）、B230型（2.3リットル）、DOHCのB204型（2.0リットル）、B234型（2.3リットル）などです。日本仕様は2.3リットルのB230型とB234型が搭載されました。

B230型は、自然吸気（NA）とターボの2種類が存在し、NAのB230Fは130PS、ターボのB230FTは165PS、さらにターボプラス仕様は190PSを誇りました。1996年モデルからは、NAに代わって低圧過給のB230FK型が採用され、低回転域のトルク向上を実現しました。B234型はNAのみで150PS、1991年から1992年モデルに搭載されました。

960との違いとグレード展開

6気筒エンジンを搭載した960との主な違いは、リアサスペンションがモデルを通じて5リンクリジット式であること（960エステートは1994年改良でマルチリンクに変更）、そして内装の形状などが挙げられます。

グレード展開は、GL、GLE、ターボモデルに加え、ポラール、クラシックといった特別仕様車も存在しました。940は、FF方式を採用した850の登場後も5年間併売され、高い人気を維持しました。生産終了後も「最後のFRボルボ」として、中古車市場で根強い人気を誇るモデルとなっています。これは、FF化された後のアルファロメオ75などにも見られる現象です。

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