ボレスワフ3世の遺言状

ボレスワフ3世曲唇公の遺言状について

ボレスワフ3世曲唇公が制定した遺言状（ポーランド語：Ustawa sukcesyjna Bolesława Krzywoustego）は、ポーランド王国の未来を見据えた重要な政治文書です。この遺言は、ボレスワフ3世が自らの死に際し、息子たちがポーランドの統治をどのように行うべきかを定めたもので、相続を巡る争いを避け、安定した統治体制を築くことを目指していました。しかし、彼の意向は実現されることなく、遺言に従った分割相続によってポーランドは分裂の道を歩むことになりました。

遺言の内容と構成

ボレスワフ3世は1115年から1118年にかけて、この遺言状を公布しました。その内容は、ポーランドを五つの公国に分割することが含まれていました。具体的には、以下のような領域が設定されました：

1. 長子領（クラクフ公国） - ヴィエルコポルスカ東部、マウォポルスカ、クヤヴィ西部、ウェンチツァ地方、シェラツ地方などを含む。この領域はボレスワフ3世の長子ヴワディスワフ2世に与えられました。
2. シロンスク領（シロンスク公国） - シロンスク地方を含む、こちらもヴワディスワフ2世が統治しました。
3. マゾフシェ領（マゾフシェ公国） - マゾフシェ及びクヤヴィ東部。ボレスワフ4世に割り当てられました。
4. ヴィエルコポルスカ領（ヴィエルコポルスカ公国） - ヴィエルコポルスカ西部。ミェシュコ3世に与えられました。
5. サンドミェシュ領（サンドミェシュ公国） - サンドミェシュ市とその周辺地域。ヘンリクに配分されました。

長子領にはカジミェシュ2世が所属しておらず、彼は父の死後に生まれたか、将来聖職者としての道が予想されていたためでしょう。

また、遺言には「年長者相続」の原則が明記されており、常に王家の最長老が王国の最高権力者（Dux）であることが規定されていました。長子領はポーランドの中心に位置し、クラクフを主都としていました。ここには国防、外交、聖職者の任命権、通貨鋳造の権限など多くの特権が与えられていました。

結果と影響

遺言状に基づく長子による体制は早々に崩壊の一途を辿りました。ヴワディスワフ2世は自身の権力を集中させる試みを行いましたが、弟たちとの間で対立が生じ、次第に反乱が勃発しました。ヴワディスワフ2世は初めは中央集権的な掌握に成功しましたが、彼自身も弟たちに敗れ、長子領を失ってしまいます。この混乱はポーランドの歴史における長期にわたる分裂期の始まりとなり、実際にこの状況は1241年のレグニツァの戦いによってさらに過酷なものとなりました。最終的に1320年には、ヴワディスワフ1世が国王として戴冠する際、ポモジェやシロンスクの大部分はポーランドの影響下を離れており、国の領有が大きく後退していたのです。

まとめ

ボレスワフ3世の遺言状は、ポーランド王国の支配構造や相続の問題を論じる上で極めて重要です。この文書は、王国の分立を招く一因となったため、歴史的な文献としても非常に重要な位置付けを持っています。ポーランドの分裂時代は、政治的な争いと権力の乱れがもたらした教訓を我々に提供します。

もう一度検索