ボン・ボヤージ

ボン・ボヤージ（桂銀淑）

「ボン・ボヤージ」は、日本で活躍した韓国出身の歌手、桂銀淑（ケイ・ウンスク）が発表したシングル作品です。彼女のシングルとしては通算で3枚目にあたり、1987年のクリスマスの日である12月25日に、当時の所属レコード会社であった東芝EMI（現在のユニバーサル ミュージック合同会社の一部）よりリリースされました。この楽曲は、桂銀淑が日本の歌謡界での地位を確固たるものにしつつあった時期に発表された作品の一つです。

楽曲の生まれた背景

この「ボン・ボヤージ」は、NHKで放送されていた音楽番組『NHK歌謡ステージ』のためにオリジナル楽曲として制作・提供されたものです。テレビ番組の企画から生まれた楽曲として、番組内で披露されることを前提として発表されました。しかし、このシングルのリリースは、桂銀淑にとって非常に重要な時期と重なりました。具体的には、本作の直前に発売されたシングル「すずめの涙」が、それまでの彼女のキャリアにおける最大のヒットとなり、ロングセールスを記録し続けていた最中だったのです。「すずめの涙」は桂銀淑を代表する一曲として、広く一般に認知されるに至っていました。

リリース当時の状況とプロモーション

「すずめの涙」の大ヒットが続いていた影響は、「ボン・ボヤージ」のプロモーション戦略にも及びました。リリース当時は、依然として前作「すずめの涙」に注目が集まっており、桂銀淑の活動の中心もそちらに置かれていました。そのため、「ボン・ボヤージ」のための大々的なメディア露出やキャンペーンは、限定的なものにとどまりました。主に、楽曲が誕生するきっかけとなった『NHK歌謡ステージ』での歌唱機会を通じて紹介されたに過ぎず、他の音楽番組やラジオ番組などでの積極的なプロモーションはほとんど行われなかったとされています。

その後の楽曲の扱い

リリース時のプロモーションが限定的であったことや、その後「すずめの涙」をはじめとする他のヒット曲が桂銀淑の代表的なレパートリーとして定着していったこともあり、「ボン・ボヤージ」がライブで披露される機会は極めて少なくなりました。桂銀淑が開催したコンサートツアーやディナーショーなどのステージにおいて、この楽曲がセットリストに組み込まれることはほとんどなく、ファンの間でも、アルバム収録などを通じて聴く機会はあっても、ライブパフォーマンスとして体験する機会は非常に限られている楽曲となっています。

収録曲の詳細

シングル盤には、表題曲である「ボン・ボヤージ」と、カップリング曲（シングルB面曲）として「星おんな」の2曲が収録されています。それぞれの楽曲の制作に関わった主なアーティストは以下の通りです。

ボン・ボヤージ
作詞・作曲：浜圭介
編曲：高田弘

星おんな
作詞：FUMIKO
作曲：浜圭介
編曲：桜庭伸幸

両楽曲ともに、桂銀淑の数多くのヒット曲を手掛けた作曲家の浜圭介氏が作曲を担当しています。表題曲「ボン・ボヤージ」は作詞も浜圭介氏自身が手掛け、編曲は高田弘氏が担当しました。高田氏は歌謡曲を中心に幅広いジャンルで活躍したアレンジャーです。カップリングの「星おんな」では、作詞をFUMIKO氏が担当し、編曲は桜庭伸幸氏が手掛けています。

まとめとして

「ボン・ボヤージ」は、桂銀淑が国民的ヒット曲「すずめの涙」で大きな成功を収めた直後に発表された作品であり、NHKの番組企画という特定の背景を持って生まれた楽曲です。前作の大ヒットの陰に隠れる形となり、プロモーションが限定的であったことや、その後のライブでほとんど披露される機会がないことから、彼女の代表曲として広く知られているわけではありません。しかし、浜圭介氏によるメロディーと、経験豊富なアレンジャーによるサウンドは、桂銀淑の情感豊かな歌声を支えており、彼女の幅広い音楽性を示す一曲として、ファンにとっては聴き逃せない価値を持っています。桂銀淑のキャリアにおける、ある時期の状況を物語る作品として、その存在意義は確かにあると言えるでしょう。

関連事項

1987年の音楽
* NHK歌謡ステージ

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