ボールドウィン・ロコモティブ・ワークス

ボールドウィン・ロコモティブ・ワークス：アメリカ鉄道史に刻まれた巨人

ボールドウィン・ロコモティブ・ワークス（BLW）は、1825年、マサイアス・ウィリアム・ボールドウィンによってペンシルベニア州フィラデルフィアで創業された、アメリカ合衆国の老舗鉄道車両メーカーです。当初は機械製作からスタートした同社は、蒸気機関車の製造に着手し、瞬く間にアメリカを代表する機関車メーカーへと成長しました。

草創期と蒸気機関車時代

創業者のボールドウィンは、当初は製本機械や織物機械を製作していました。しかし、自ら設計・製作した定置式蒸気機関の成功をきっかけに、蒸気機関車への関心を深めていきます。1831年にはフィラデルフィア博物館のために展示用の小型機関車を製作、これが事業の転換点となりました。

1832年、フィラデルフィア・ジャーマンタウン・アンド・ノリスタウン鉄道向けに最初の蒸気機関車「オールド・アイアンサイド」を製造。この機関車は20年以上も使用され、BLWの技術力の高さを証明しました。その後も、BLWは数多くの蒸気機関車を製造し、アメリカ鉄道の発展に大きく貢献しました。1906年には、生産規模の拡大に伴い、フィラデルフィアからペンシルベニア州エディストーンへと工場を移転。広大な敷地に最新の設備を備えた新工場は、BLWがアメリカ最大の機関車メーカーとしての地位を確立する上で重要な役割を果たしました。第一次世界大戦中には、兵器の製造も請け負うなど、その事業は多岐にわたりました。

ディーゼル機関車への挑戦と時代の変化

1930年代後半、BLWはディーゼル機関車の製造を開始しました。しかし、第二次世界大戦の影響で生産計画は中断。戦後のディーゼル機関車市場は、EMDとALCOが独占状態となり、BLWは市場競争において苦戦を強いられました。ディーゼル機関車の信頼性においてEMDやALCOの後塵を拝したことも、業績悪化の一因となりました。

[1948年]]には、ウェスティングハウス・エレクトリックがBLWの株式を取得、その後、ライマ・ハミルトンとの合併を経て、ボールドウィン・ライマ・ハミルトン]となりました。しかしながら、経営状況は改善せず、ウェスティングハウスが電装品の製造を中止したことも追い打ちをかけました。[[1956年、BLWはついに機関車製造から撤退、7万500両以上の機関車を世に送り出した歴史に幕を閉じました。

日本におけるボールドウィンの足跡

BLWは、日本にも多くの機関車と台車を輸出しました。1887年、北海道の釧路鉄道が日本で初めてボールドウィン製の蒸気機関車を導入。その後、官設鉄道や私設鉄道にも多数の機関車が納入されました。これらの機関車は、日本の鉄道発展に貢献しましたが、一方で粗製濫造との評価もあったようです。

また、大正から昭和初期にかけては、BLW製の電車用台車が数多く採用されました。国産メーカーによるコピー生産も盛んに行われ、日本の電車用台車の標準的な設計として広く普及しました。特に、Baldwin-A・-AA形と呼ばれる台車は、日本の私鉄を中心に広く使われました。

現在でも、日本各地でボールドウィン製の蒸気機関車や電車の台車が保存されており、その歴史を今に伝えています。これらの車両は、BLWの技術力と、日本における鉄道史を語る上で重要な存在です。

BLWの遺産

機関車製造終了後、BLHは建設機械の製造へと事業を転換しましたが、1972年に会社は閉鎖されました。しかし、BLWがアメリカ、ひいては世界の鉄道史に刻んだ功績は、現在もなお語り継がれています。数多くの機関車を製造しただけでなく、日本の鉄道車両にも大きな影響を与えたBLWの歴史は、鉄道技術発展の一端を示す重要なものです。

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