ポスト・オフィス・リミテッド

イギリスにおいて、ポスト・オフィス・リミテッド（英語: Post Office Ltd）は、国民生活に密着した郵便局ネットワークのリテール部門を担う主要企業です。全国に広がる郵便局網を通じて、切手の販売や銀行サービスをはじめとする多岐にわたる商品・サービスを提供しています。この企業は、英国政府の一部であるビジネス・エネルギー・産業戦略省が、ポスタル・サービシズ・ホールディング・カンパニーを介して所有しています。

歴史的経緯

現在のポスト・オフィス各店舗は、かつてはロイヤルメールの配送事業と共に、中央郵便局の一部を構成していました。その後、ポスト・オフィス・コーポレーションの一部となり、組織が再編されます。1986年には、ポスト・オフィス・コーポレーションの完全子会社としてポスト・オフィス・カウンターズ・リミテッドが設立されました。さらに、2001年にポスト・オフィス・コーポレーションがロイヤルメール・グループに改称された際、ポスト・オフィス・カウンターズ・リミテッドは現在の名称であるポスト・オフィス・リミテッドへと変更されました。

財政問題と改革

2000年代に入ると、ポスト・オフィス・リミテッドは経営難に直面し、赤字が報告されるようになりました。2006年には1億200万ポンドもの赤字が報じられ、メディアではその経営効率や運営能力に対する疑問の声が上がりました。特に僻地の郵便局を維持するために支出されていた年間1億5千万ポンドの補助金削減が提案され、これに伴う約2,500局の郵便局閉鎖の可能性が浮上しました。この計画は、郵便サービスを失うことへの地域社会からの強い反発を招きました。

こうした状況に対し、政府は2007年にロイヤルメール・グループ全体へ17億ポンドの補助金を投入しました。この支援は、ロイヤルメール、ポスト・オフィス・リミテッド、パーセルフォースといったグループ全体のネットワークへの投資に充てられ、グループは2011年に黒字転換を達成します。この期間、直営の王冠郵便局についても、85局が閉鎖され、うち70局は小売業者W・H・スミスに売却されるなど再編が進められました。これに先立ち、W・H・スミス店舗内での郵便局窓口設置が6箇所で試行され、W・H・スミス側には年間約250万ポンド相当の収入増が見込まれていました。また、2008年から2009年にかけては、約2,500局の小規模郵便局の整理も行われました。この人員削減には公費が支出され、小規模局の局長には概ね20ヶ月分以上の給与に相当する約6万5千ポンドが支払われたとされています。

ネットワークの近代化に向けても投資が行われました。2010年11月には、政府が2015年までに13億4千万ポンドを投じる計画を発表し、郵便局ネットワークの更新を進める方針が示されました。さらに、2013年 11月27日には、2015年から2018年にかけて追加で6億4千万ポンドを投入し、近代化を完了させるための支援策が発表されています。

ロイヤルメールからの独立と提携

2011年に制定された郵便事業法に基づき、ポスト・オフィス・リミテッドは2012年 4月1日にロイヤルメール・グループから法的に独立しました。しかし、両社の間では十年間の業務提携契約が締結され、郵便局は引き続き切手販売やロイヤルメールが扱う手紙、小包の受付などの基本的な郵便サービスを提供し続けています。また、同法には、将来的にポスト・オフィス・リミテッドが相互組織（mutual organisation）へと移行する可能性も選択肢として含まれていました。

多様なサービスと特別な郵便局

ポスト・オフィス・リミテッドは、全国の窓口を通じて様々なサービスを提供しています。伝統的な郵便サービスに加え、イギリス国内の約20行の銀行顧客に対し、ビジネス・バンキング業務を提供しています。また、一部の非都市部地域では、バンを改造した「移動郵便局（mobile post offices）」が巡回し、サービスの提供範囲を広げています。

一方で、一般利用者がアクセスできない特別な郵便局も存在します。これには、バッキンガム宮殿内の「コート」（現在はロイヤルメール運営）、庶民院、ポートカリス・ハウス（議員会館）、王立自動車クラブ（ロンドン）、スコットランド議会、ウィンザー城、そしてポスト・オフィス本社内の郵便局など、7箇所が挙げられます。

ポスト・オフィス・リミテッドは、国民生活の基盤としての役割を担いながら、組織改革とサービス拡充を図り続けています。

もう一度検索