ポチテカ

ポチテカ - アステカの交易者

ポチテカ（英: Pochteca）は、アステカ帝国において重要な役割を果たした交易者であり、彼らは長距離貿易を行う武装した隊商を組織していました。これらの隊商は、アステカの中心に位置するメキシコ高地から、低地にあるプトゥン人の商業中心地シカランコや、カカオの産地であるソコヌスコに至るまで、さまざまな地域を行き来しました。ポチテカという名称の由来は「パンヤの木の国から来た人々」という意味で、熱帯地域との関係を示していると言われています。

職務と組織

ポチテカは、単なる小売業者ではなく、世襲制のギルドを組織し、商業活動を行いました。アステカの首都テノチティトランや商業の中心であるトラテロルコを拠点に活動し、全体で12のギルドが存在しました。これらのギルドは内部で役割が明確に分かれており、貿易担当（oztomeca）、諜報部門（nahualoztomeca）、奴隷の商取引を行う者（tecoaniまたはteqltiani）、領主の財産を交換する者（tecunenenqui）、そして全体を統括する者（pochtec’atlailotlacまたはacxotecatl）などがありました。

アステカでは車輪や大型の荷役用動物が存在しなかったため、荷物は人夫（tlamama）によって運搬されました。ポチテカは、各地からアステカに送られる貢納を管理し、また新たに征服した地域に関する情報を収集する役割も果たしていました。このような情報は、戦争の理由として利用されることもあり、ポチテカの活動はアステカの征服政策を支える重要な要素となりました。

ポチテカは独自の神々を崇拝することを許されており、裁判権も認められました。しかし、彼らの豊かさを誇示することには制限があり、逸脱する者には厳しい罰が科されました。また、交易が成功した際には神への感謝として宴会を開き、戦士や貴族も招待されることが一般的でした。

交易品

ポチテカが扱う主な交易品には、飲食や通貨として用いられるカカオ、装飾品に使われるケツァールの羽、ジャガーの皮、金、トルコ石、翡翠、琥珀などがありました。彼らは、友人や仲間とのパートナーシップを大切にし、重要な商取引においては特に神への感謝を示す必要がありました。

低地マヤの商業中心地であるシカランコやソコヌスコへの旅では、隊商が多くの運搬人を伴って移動し、これらの地域との貿易の重要性が増しました。隊商はオアハカの北部にあるトチテペクから出発し、目的地に応じて二手に分かれて移動しました。彼らは貴重な商品を運搬する際、他人の嫉妬心を避けるために夜間に首都に入ることが一般的でした。

記録と文化的背景

ポチテカに関する記録は、ベルナルディーノ・デ・サアグンによる『ヌエバ・エスパーニャ概史』に見られます。この文献により、彼らの活動や文化についての知見を得ることができます。彼らの存在はアステカ社会の商業活動において欠かせないものとして位置づけられています。

ポチテカは、アステカの経済と文化に多大な影響を与え、アステカ社会の基盤を形作る重要な役割を果たしていました。彼らの世襲制のギルドや取引手法は、後の時代にもその影響を及ぼしており、当時の商業の形態や社会構造を理解する手助けとなるでしょう。

もう一度検索