カカオ

カカオについて

カカオ（学名: Theobroma cacao）は、アオイ科の常緑樹で、チョコレートやココアの原料として世界中で栽培されています。カカオの木は、その学名が示すように「神の食べ物」を意味し、古くから人々に珍重されてきました。

カカオの木の生育

カカオの木は、高さ4.5〜10メートル程度に成長し、規則的な降雨、水はけの良い土壌、そして湿潤な気候を好みます。主に標高300メートル程度の丘陵地に自生し、中央アメリカから南アメリカの熱帯地域が原産です。

樹齢4年程度で開花し、幹から直接、直径3センチ[[メートル]]ほどの白い花（品種によっては赤色や黄色を帯びる）を房状につけます。結実率は1％未満と非常に低く、花期は原産地では周年、栽培地では気温に左右されます。日本では沖縄県や小笠原諸島で栽培されており、5月以降に開花することが多いです。

カカオの果実は「カカオポッド」と呼ばれ、長さ15〜30センチ[[メートル]]、直径8〜10センチ[[メートル]]で、幹から直接ぶら下がります。形は卵型が多いですが、品種によって長楕円形、偏卵型、三角形など様々で、外皮の色も赤色、黄色、緑色など多様です。カカオポッドの中には、20〜60個ほどの種子（カカオ豆）が入っており、この種子がチョコレートやココアの原料となります。カカオ豆は40〜50％の脂肪分を含んでおり、果肉はパルプと呼ばれます。

収穫期は産地によって異なり、概ね年2回、乾期と雨期に行われます。収穫されたカカオポッドは、果皮を除いた後、約1週間ほど発酵させ、取り出されたカカオ豆は、ココアやチョコレートの原料として利用されます。

カカオの品種

現在、栽培されているカカオの品種は、主に以下の3系統に分類されます。

フォラステロ種 (FORASTERO)
西アフリカや東南アジアで広く栽培されている主流品種です。
南米のアマゾン川流域が原産とされ、成長が早く、病害に強いのが特徴です。
果実は黄色で、表面は滑らかです。
ポリフェノール含有量が多く、豆の内部は紫色で、苦味が強いですが、ミルクチョコレートに適しています。
ガーナ、コートジボワール、ナイジェリア、ブラジルなどで栽培されています。
クリオロ種 (CRIOLLO)
中米原産の品種で、独特の香りから「フレーバービーンズ」と呼ばれています。
ベネズエラやメキシコなどで少量生産されています。
病害虫に弱く、大規模栽培には不向きです。
果実は赤色や黄色で、表面にイボや深い溝があります。
ポリフェノール含有量が少なく、苦味や渋味が少ないため、高級チョコレートに使われます。
豆の内部は白い（または白っぽい）のが特徴です。
トリニタリオ種 (TRINITARIO)
ベネズエラやトリニダード・トバゴなど、中南米で栽培されています。
フォラステロ種とクリオロ種の交配種で、栽培が容易で品質も優れています。
果実は大きめです。

カカオの歴史

カカオの歴史は古く、紀元前1900年頃からメソアメリカで利用されていました。オルメカ文明の時代から栽培食物とされており、マヤ文明やアステカ文明の遺跡からもその利用を示す証拠が発見されています。

マヤ文明ではカカオは「カカウ」と呼ばれ、飲料として飲まれたほか、神への供物や貨幣としても用いられました。アステカ文明でも同様に、カカオは貴重なものとして扱われました。

1502年、コロンブスがカカオの種子をヨーロッパに持ち帰りましたが、当時はその価値は認識されませんでした。その後、1519年にエルナン・コルテスがアステカでカカオの利用法を知り、砂糖や香辛料を加えたショコラトル（チョコレート）が上流階級に歓迎されるようになりました。

17世紀にはヨーロッパでココア飲料が流行し、カカオの栽培も拡大していきました。19世紀には、西アフリカでの栽培が盛んになり、現在に至っています。

カカオの利用

カカオは、主に以下の形で利用されます。

カカオマス: カカオ豆を焙煎してすり潰したもので、ココアとチョコレートの共通原料です。
ココアバター: カカオマスから分離された脂肪分で、チョコレートの原料として使用されます。
ココアパウダー: カカオマスを脱脂、粉砕したもので、ココア飲料などに使われます。
チョコレート: ココアバターを加えたカカオマスに、砂糖やミルクなどを加えて作られます。

その他、カカオの粉末、カカオニブ、カカオシロップ、カカオビネガーなどが、食材や調味料として利用されています。

カカオの薬効

カカオには、テオブロミンやカフェインなどの薬効成分が含まれています。テオブロミンには利尿作用や筋肉弛緩作用があり、カフェインには覚醒作用があります。また、ココアバターは、ヒトの体温で溶ける植物性油脂として、座薬や軟膏の基剤として用いられます。

カカオの問題点

カカオの生産には、以下のような問題点が指摘されています。

森林破壊: カカオ農園の拡大により、森林破壊が進んでいます。
児童労働: カカオの生産現場では、児童労働が問題となっています。特に西アフリカ地域では、児童奴隷が労働力として使われている現状があります。
農家への還元: カカオの価格が低く抑えられており、生産農家の収入が低い状況が続いています。チョコレート産業全体の利益のうち、農家が得ているのはごく一部にすぎません。

カカオの生産と貿易

カカオ豆の生産は、西アフリカのコートジボワールとガーナが主要な生産国です。カカオ豆の貿易は、一部の国が加工能力を持っているため、輸出入が行われています。

カカオ豆の価格は、国際相場によって変動しますが、生産者は不安定な市場の影響を受けています。カカオ先物市場では、現物の取引量よりも遥かに多い量が取引されており、価格の乱高下が問題となっています。

まとめ

カカオは、チョコレートやココアの原料として重要なだけでなく、歴史的、文化的にも深い関わりを持つ植物です。その一方で、生産現場では様々な問題が起きています。カカオの真実を知ることで、より持続可能な消費行動が求められています。

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