ポリアセタール

ポリアセタール樹脂：特性、製造、用途、主要メーカー

ポリアセタール樹脂（POM）は、優れた機械的特性と加工性を兼ね備えたエンジニアリングプラスチックとして、様々な産業で広く利用されています。別名、ポリホルムアルデヒド、アセタール樹脂、ポリオキシメチレンとも呼ばれ、その略称はPOMです。

ポリアセタール樹脂の種類と製造方法

POM樹脂は、大きく分けてホモポリマーとコポリマーの2種類があります。

ホモポリマー: ホルムアルデヒドのみを重合して作られ、結晶性が高く、剛性と強度が優れています。ただし、熱に対する安定性に劣るため、特殊な処理（エンドキャップ処理）が必要になります。精製されたホルムアルデヒドを触媒を用いてアニオン重合させることで合成されます。
コポリマー: ホルムアルデヒドに加え、オキシエチレン単位などの他のモノマーを含む共重合体です。ホモポリマーに比べ、熱安定性が高く、寸法安定性にも優れています。1,3,5-トリオキサンとエチレンオキシドまたは1,3-ジオキソランを、カチオン重合開始剤を用いて開環重合させることで合成されます。

どちらの種類も、モノマーや重合過程における不純物の影響を受けやすく、ポリマー末端が不安定になり、熱によって解重合（アンジッピング反応）を起こす可能性があります。そのため、熱安定性を高めるためのエンドキャップ処理が重要となります。近年では、高度な精製技術により、不純物の少ない高品質なPOM樹脂の製造が可能になっています。エンドキャップ処理には、ホモポリマーでは無水酢酸、コポリマーではメチラールが用いられることが一般的です。

ポリアセタール樹脂の特性

POM樹脂は、以下の特性を備えています。

高い強度と剛性: 結晶性が高いため、高い強度と剛性を持ちます。
優れた耐衝撃性: 非晶質部分と結晶質部分が混在することで、耐衝撃性に優れています。
低摩擦係数: 摺動特性に優れており、摩耗が少ないため、軸受などにも適しています。
寸法安定性: 熱による寸法変化が少ないため、精密部品にも利用できます。
耐薬品性: 多くの薬品に対して高い耐性を示します。
耐疲労性: 反復応力に対する耐久性が高いです。
難燃性: 酸素指数は15～16と比較的低く、燃えやすい材料です。

しかし、吸湿性が高いため、成形前に十分な乾燥が必要です。また、熱に弱いため、高温での使用や長時間高温にさらされる状況では注意が必要です。

ポリアセタール樹脂の用途

POM樹脂は、その優れた特性から、幅広い用途に使用されています。

機械部品: ギヤ、歯車、カム、ベアリングなど、精密な機械部品に多く使用されています。
自動車部品: 内装部品、外装部品、機械部品など、自動車の様々な部分に使用されています。
電気・電子部品: コネクタ、スイッチ、各種筐体など、電気・電子機器の部品に使用されています。
日用品: 文具、雑貨、調理器具など、様々な日用品に使用されています。
工業用部品: 各種治具、工具など、工業用途でも広く利用されています。
楽器: リコーダーなどの木管楽器、金管楽器の部品に使用され、呼気による結露対策に役立っています。
模型: 鉄道模型の台車枠、連結器、可動部部品などにも使用されています。

主要メーカーと市場シェア

POM樹脂は世界中で生産されており、多くの企業が製造しています。2014年時点での主要メーカーと市場シェアは以下のとおりです。（シェアは変動しますので、最新の情報をご確認ください。）

ポリプラスチックス (DURACON): 18%
セラニーズ (Hostaform、Celcon): 15%
デュポン (Delrin): 10%
韓国エンジニアリングプラスチックス (Kepital): 8%
三菱エンジニアリングプラスチックス (Iupital): 7%
旭化成 (Tenac, Tenac-C): 4%
クオドラントポリペンコジャパン
中国各社: 26%

括弧内は各社の商標名です。

まとめ

ポリアセタール樹脂は、その高い強度、耐衝撃性、摺動特性、そして加工性の良さから、様々な分野で重要な役割を果たしています。今後も、更なる高性能化、多様な用途への展開が期待される材料です。

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