エチレングリコール

エチレングリコールの概要

エチレングリコール（英: ethylene glycol）とは、主に溶媒や不凍液、さらには合成原料として広く利用される二価アルコールの一種です。化学式はC₂H₆O₂で、構造式はHO-CH₂-CH₂-OHとなっています。この化合物は無色で粘性のある液体であり、水をはじめとする極性溶媒に良く溶ける特性を持っています。そのため、温度が−12.6℃と比較的低い融点を持つエチレングリコールは、特に水冷エンジンの不凍液として用いられています。引火点は111℃、発火点は398℃で、消防法においては第4類危険物（第3石油類）に属しています。

合成方法

エチレングリコールは、エチレンオキシドを酸触媒のもとで加水分解することによって生成されます。また、触媒を使わずに高温・高圧下で水とエチレンオキシドを反応させることでも得ることが可能です。具体的には、反応式は以下の通りです。

$$ C₂H₄O + H₂O ⟶ HO-CH₂CH₂-OH $$

2008年度における日本国内のエチレングリコールの生産量は628,793トンで、消費量は12,089トンとなっています。

用途

エチレングリコールはその多様な応用範囲を持っています。銅を触媒にして空気中で酸化処理を行うと、グリオキサールが生成され、さらに二クロム酸カリウムを用いた酸化反応ではシュウ酸が生成されます。また、ポリエチレンテレフタレート（PET）の主成分として利用され、そのほかのポリエステル、例えばPENやPTTの原料としても重要な役割を果たしています。

さらに、エチレングリコールのエーテル類はセロソルブ（cellosolve）と呼ばれ、ブチルセロソルブやフェニルセロソルブ、ジメチルセロソルブなどが塗料の溶媒として広く利用されています。

その特性を利用して自動車用の不凍液としても広く使われていますが、かつて使われていたグリセリンよりも高い性能を持つことから、一時期多くの場面で採用されてきました。しかし、近年では自然への影響が懸念されることから、再びグリセリンの使用が見直されるケースも増えています。

毒性

エチレングリコールは甘味を持ちますが、生体内で代謝を受けると有毒な物質に変化します。その代謝物であるシュウ酸は、低カルシウム血症やシュウ酸カルシウムの析出による腎障害を引き起こすことがあります。過去には不凍液の誤飲や食品添加物への混入によって中毒事件が発生し、社会問題となったこともあります。

万が一誤飲した場合や自殺の目的で摂取した時には、エタノールを投与することでエチレングリコールの代謝を抑制し、尿からの排泄を促す治療が行われます。これは、エタノールがエチレングリコールの代謝を競合して行われるためです。

法規制

エチレングリコールは、いくつかの法令によって規制されています。消防法では第4類危険物に位置づけられています。また、労働安全衛生法に基づき、危険物や有害物質の扱いについても厳格な基準が設けられています。海洋汚染防止法や化学物質排出把握管理促進法（PRTR法）でも、エチレングリコールは有害物質として取り扱われており、その管理が求められています。

関連項目

• - グリコール
• - グリコール酸
• - グリオキシル酸
• - ジエチレングリコール
• - ポリエチレングリコール
• - グリコールアルデヒド
• - グリオキサール

エチレングリコールは、我々の日常生活や産業に広く関与している重要な化合物ですが、その利用にあたっては、環境への配慮と取り扱いに関する安全性を常に念頭に置く必要があります。

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