ポリエーテルイミド

ポリエーテルイミド（PEI）：比類なき高性能を誇るエンジニアリングプラスチック

ポリエーテルイミド（PEI）は、その卓越した特性から、スーパーエンジニアリングプラスチックとして広く知られています。1980年代初頭にゼネラルエレクトリック社によって開発され、ULTEM（ウルテム）の商品名で市場に送り出されました。その後、サウジ基礎産業公社（SABIC）がGEのプラスチック部門を買収し、現在ではSABICがPEIの主要供給元となっています。

PEIの最大の特徴はその高い耐熱性です。217℃という高いガラス転移温度を有し、170℃程度までの温度範囲においても、その高い弾性率を維持します。これは、一般的な熱可塑性樹脂をはるかに凌駕する性能であり、高温環境下での使用を可能にしています。さらに、PEIは耐薬品性、耐水性、耐熱水性にも優れており、過酷な条件下でも安定した性能を発揮します。

安全性に関しても、PEIは高い難燃性を備えています。万一燃焼した場合でも、発煙量が少なく、安全性に配慮した設計が求められる用途にも適しています。電気特性にも優れ、絶縁破壊強度も高いことから、電気・電子部品への適用も可能です。また、耐候性にも優れており、長期間にわたって安定した性能を維持できます。これらの特性を総合的に評価すると、PEIは航空機部品のような高度な信頼性が求められる用途にも適していると言えます。

加えて、PEIは高い流動性を有しており、射出成型などの成形加工が容易です。近年では3Dプリンターを用いた積層造形にも利用されており、設計の自由度を高める上で重要な役割を果たしています。

PEIは、その優れた特性から、実に多様な分野で活用されています。具体的には、以下の用途が挙げられます。

精密機器: 高い精度と安定性が求められる精密機器の部品として。
自動車部品: エンジンルーム内など高温になる箇所の部品として。
航空機部品: 高い信頼性と安全性が求められる航空機部品として。
家電: 耐熱性と耐久性が求められる家電製品の部品として。
医療機器: 生体適合性が必要な医療機器の部品として。
電気・電子分野: 絶縁材や基板材料として。
食品機械: 食品との接触を想定した部品として。
その他: ギターピック、メガネフレームなど、多様な用途で使用されています。

PEIは、その高い性能と汎用性から、今後も様々な分野で重要な役割を果たしていくと期待されています。他のスーパーエンジニアリングプラスチックであるポリイミド（PI）、芳香族ポリエーテルケトン（PEEK）、フッ素樹脂、液晶ポリマー（LCP）、非晶ポリアリレート（PAR）、ポリサルフォン（PSF）、ポリエーテルサルフォン（PES）、ポリフェニレンスルフィド（PPS）などと比較検討することで、最適な材料選択を行うことができます。これらの材料それぞれに固有の特性があり、用途に応じて使い分けることが重要です。PEIは、その優れたバランスのとれた特性から、多くの用途において有力な選択肢となるでしょう。

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