非晶ポリアリレート

非晶ポリアリレート（PAR）の概要

非晶ポリアリレート（PAR）は、2価フェノールとジカルボン酸を重合させた非晶性の熱可塑性樹脂です。高い耐熱性、優れた機械的強度、そして高い透明性を兼ね備えている点が大きな特徴です。 全芳香族ポリエステルの一種ですが、融点と熱分解温度の差が大きいため、成形加工が容易です。主にビスフェノールAとフタル酸を用いて製造されていますが、近年では、より高度な特性を持つ材料の開発も進められています。

PARの製造方法

PARの製造方法には、大きく分けて以下の3種類があります。

1. 界面重縮合法: 芳香族ジカルボン酸ジクロリドとビスフェノールを、それぞれ異なる溶媒に溶解後、混合することで重合反応を起こさせます。この方法は、高分子量のPARを得やすいという利点があります。
2. 溶融重合法: 芳香族ジカルボン酸とビスフェノール誘導体を高温で溶融し、エステル交換反応により重合させます。高温での制御が重要であり、樹脂の変色に注意が必要です。分子量を高めるのが難しい点が課題です。
3. 溶液重合法: 芳香族ジカルボン酸ジクロリドとビスフェノールを、アミン化合物を用いて溶液中で重合させます。可逆反応が抑制され、高分子量のPARを得やすい反面、溶媒の回収工程が必要になります。

PARの特性

PARは、次のような優れた特性を持っています。

高い透明性: 全光線透過率は89%と、ポリカーボネートに匹敵する高い透明性を持ちます。
優れた耐候性: 紫外線照射によって表面で分子転移が起こりますが、この転移によって生成された分子構造が紫外線を吸収するため、結果として高い耐候性を示します。
高い機械的強度: 降伏伸度が高く、耐衝撃性、耐クリープ性、耐摩耗性に優れています。また、高い弾性とばね圧縮からの回復力も特徴です。
優れた耐薬品性: 多くの薬品に対して高い耐性を示しますが、強酸や強アルカリには侵食されます。
容易な加工性: 繊維やフィルムへの加工が容易です。ただし、射出成形時の流動性は、やや低いと言えます。
高い耐熱性: 非強化状態でも、荷重たわみ温度175℃、ガラス転移温度193℃と高い耐熱性を示します。
難燃性: 改質なしでUL94V-0の難燃性を有します。

PARの改質

PARの特性をさらに向上させるために、以下の改質が施されます。

フィラー強化: ガラス繊維やミネラル類などのフィラーを配合することで、機械的強度を向上させます。
ポリマーアロイ: ポリカーボネートやポリエステルなどとのアロイ化により、特性の調整が可能です。

PARの用途

PARは、その優れた特性から、幅広い分野で活用されています。

電機・電子機器: 照明機器、熱風吹き出し口部品、CDプレーヤーのターンテーブル、自動車のレンズやハウジングなど。
自動車: 方向指示器レンズ、キャップランプケース、電装部品ハウジングなど。
医療機器: 薬品容器、義歯など。
* その他: ストーブ部品、時計枠、カメラのストロボ部品、樹脂ばね、プラスチックポンプ、鋼線被覆材、耐熱包装フィルム、光学ネットワークユニット、ロープ、釣り糸、魚網、スポーツ用品、エアバッグなど。

近年では、透明性とコストメリットから、光学用途への展開も期待されています。ただし、紫外線遮断特性を考慮する必要があります。また、高強度繊維としての利用も拡大しており、様々な分野で活躍しています。

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