ポリグルタミン酸

ポリグルタミン酸とは

ポリグルタミン酸（PGA）は、グルタミン酸を構成単位とするポリペプチドの一種です。通常のペプチド結合とは異なり、γ位のカルボキシル基とα位のアミノ基が結合したγ-ポリグルタミン酸（γ-PGA）として天然に存在します。化学式は[-NH-CH(COOH)-CH2CH2-CO-]nで表され、重合度が高いほど、その保水力は増大します。重量比で自重の5000倍もの水分を保持すると言われ、医療、医薬品、健康食品、化粧品など幅広い分野で活用されています。

ポリグルタミン酸の特徴

高い保水力: 他の物質と比較して、非常に高い保水力を持つのが特徴です。この性質が様々な分野での応用を可能にしています。
生体適合性: 天然由来であるため、生体適合性が高く、医療分野での利用に適しています。
多様な分子構造: L体、D体、DL体のグルタミン酸が重合したものが存在し、それぞれ異なる性質を持ちます。

ポリグルタミン酸の多様な応用

医療分野: 抗がん剤のDDS（ドラッグデリバリーシステム）として利用される他、手術後の癒着防止剤としても用いられています。
食品分野: 納豆の粘り成分として知られ、健康食品としても利用されています。
化粧品分野: 高い保水力を活かし、保湿成分として化粧品に配合されています。
水処理: 水中の不純物を凝集させる性質があり、水処理技術への応用が期待されています。

納豆との関係

納豆のネバネバ成分は、ポリグルタミン酸と多糖類のフルクタンが主成分です。また、納豆菌と同じバチルス属の炭疽菌の莢膜もポリグルタミン酸を主成分としています。このため、納豆が海外で紹介された際、その独特な粘り気から当初は受け入れられなかったという逸話もあります。さらに、クラゲの刺胞細胞にもポリグルタミン酸が含まれており、マリンスポーツ経験者が納豆アレルギーを発症しやすいのは、クラゲの刺傷が原因である可能性も指摘されています。

グルタミン酸の異性体

グルタミン酸にはL体とD体という光学異性体が存在します。一般的に生物が生成するアミノ酸はL体のみですが、納豆菌や炭疽菌が作るポリグルタミン酸にはL体とD体が混在しています。D体を含むポリペプチド鎖は、通常のペプチダーゼでは分解されにくい性質があるため、これらの菌が自己防衛のためにポリグルタミン酸を作り出しているという説も有力です。

主なメーカー

ポリグルタミン酸の研究開発や製造を行っている主なメーカーは以下の通りです。

味の素
出光
明治フードマテリア
ヤクルト薬品工業
一丸ファルコス
日本ポリグル

今後の展望

ポリグルタミン酸は、その高い保水力や生体適合性から、今後も様々な分野での応用が期待されています。特に、環境問題への貢献や医療分野でのさらなる発展が注目されています。

参考情報

ポリグルタミン酸 - 素材情報データベース＜有効性情報＞（国立健康・栄養研究所）

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