グルタミン酸

グルタミン酸の概要

グルタミン酸（英: glutamic acid）は、アミノ酸の一種であり、化学的には2-アミノペンタン二酸と呼ばれます。略称では「Glu」や「E」と表記され、特に神経伝達物質として重要な役割を担っています。また、その構造から「2-アミノグルタル酸」とも参照されることがありますが、「グルタミン」とは異なるため、混同しないよう注意が必要です。

名称と発見の経緯

グルタミン酸は、コムギのグルテンを加水分解して最初に見つかったため、名前が付けられました。英語では「gluten」がグルテンを、そして「glutamic acid」がグルタミン酸を指します。ちなみに、グルタミン酸とその塩では英語で「glutamate」と表現されるため、混乱を招くことがあります。

性質と生理的役割

グルタミン酸は、カルボキシ基を持つ酸性極性のアミノ酸です。地球上の生物のタンパク質を構成する重要な成分でもあり、ヒトの体内でも合成されるため必須アミノ酸とはされません。

さらに、神経においてはグルタミン酸が神経伝達物質として機能します。これは、神経細胞の興奮を促す効果があり、抗てんかん薬などの治療法でも活用されています。逆に、体内のアンモニアと反応することで他の有害な物質に変化することもあり、このため肝性脳症と呼ばれる病態を引き起こす可能性があります。

グルタミン酸の致死量、すなわちLD50は20 g/kgであり、特に注意が必要です。体重50キログラムの人では約1キログラムに相当します。

生合成のメカニズム

ヒトの体内では、2-オキソグルタル酸からグルタミン酸が合成されます。この過程には、グルタミン酸デヒドロゲナーゼや、グルタミン酸トランスフェラーゼといった酵素が関与します。これにより、他のアミノ酸からアミノ基を転移することが可能です。

食品中の存在

グルタミン酸は、コンブやチーズ、さらには緑茶などの食品に豊富に含まれています。また、シイタケ、トマト、魚介類などにも一定量存在しています。

利用と食品添加物

グルタミン酸は、ヒトの味覚において重要な旨味成分として知られていますが、食品によっては、その添加が不利に働く場合もあります。例として、日本酒へのグルタミン酸の添加は酸味や渋味を強め、品質を損なう可能性があります。

市場で一般的に利用されているのは、グルタミン酸とナトリウムを組み合わせたNa塩であるL-グルタミン酸ナトリウムで、これはうま味調味料として幅広く使用されています。日本では「味の素」として知られています。

製法

21世紀におけるグルタミン酸の生産は主に工業的な手法によります。これには、アミノ酸発酵法が最も一般的で、微生物を用いた手法がさまざまあります。また、化学合成法は公衆衛生への懸念からあまり用いられていません。

• - 酸加水分解法: 古い方法で、主に植物性タンパク質からグルタミン酸を取り出しますが、純度が低くまれに用いられています。
• - 抽出法: テンサイの廃糖蜜から可能ですが、コストの問題から一般的ではありません。
• - 酵素促進合成法: 特定の酵素を用いた方法で、効率的な合成を目指しています。
• - アミノ酸発酵法: 微生物に特定の条件を与え、その代謝を促進してグルタミン酸を生産します。これは商業的には非常に成功した方法です。

グルタミン酸は、今後もさまざまな分野で研究され、食品産業や医療などでの応用が期待されています。

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