ポルシェ・オートモービル・ホールディング

ポルシェSE：フォルクスワーゲン帝国を支える巨大な影

ポルシェ・オートモービル・ホールディングSE（通称ポルシェSE）は、ドイツ・シュトゥットガルトに拠点を置く、世界的に知られた巨大な持株会社です。ポルシェ家とピエヒ家という、自動車業界に名を刻む名家によって完全に支配されており、その議決権の100％を両家が保有しています。2007年の設立以来、自動車業界、とりわけフォルクスワーゲンAGとの複雑な関係を通して、その存在感を増し続けています。

ポルシェSEの最も重要な役割は、フォルクスワーゲンAGの主要株主としての地位にあります。2019年以降、フォルクスワーゲンAGの議決権ベースで約53％の株式を保有し、同社の経営に大きな影響力を持っています。しかし、ポルシェSEとフォルクスワーゲンAGの関係は、単なる株主と被投資会社という枠を超えた、より複雑で歴史的なつながりによって特徴付けられます。

この複雑な関係の始まりは、2005年にさかのぼります。ポルシェは、フォルクスワーゲンAGの株式の取得を開始し、敵対的買収を阻止しようとしたのです。この動きは、段階的に株式保有比率を高めていくことになります。当初は約20％の株式を取得する意向を発表し、その後も着実に比率を高め、2006年には21.2％、さらに27.4％、そして29.9％と、その勢いは留まることを知りませんでした。

2007年には、ポルシェSEが設立され、業務を子会社に移管しました。同年、ポルシェAG（Dr Ing hc F.Porsche AG）は、ポルシェSEの孫会社として位置づけられました。その後、ポルシェAGはフォルクスワーゲンAGに経営統合され、同社の完全子会社となりました。

フォルクスワーゲンAGへの出資比率は、ポルシェSEの設立後も拡大し続けました。2007年3月には30.9％、2008年9月には35.14％に増加。そして2009年1月には、ついにフォルクスワーゲンAGの普通株式の50.76％を保有し、過半数株主となりました。しかし、この急激な拡大は、ポルシェSEの資金繰り悪化というリスクをもたらしました。そのため、カタールの政府系ファンドであるカタールホールディングLLCが資本参加することとなります。その後、2013年にはカタールホールディングLLCが保有株の一部をポルシェ家とピエヒ家に売却し、議決権ベースでは再び両一族が100％保有となりました。

その後も、ポルシェSEはフォルクスワーゲンAGへの出資比率を高め続けました。2015年にはスズキから株式を取得し、52.2％に増加。2019年にはさらに4億ユーロを投じて53.1％に引き上げました。2020年には、さらに0.2％の株式を追加取得しています。

このように、ポルシェSEとフォルクスワーゲンAGの関係は、単なる資本関係を超えた、複雑で歴史的なつながりによって特徴付けられます。ポルシェSEは、フォルクスワーゲンAGの安定的な経営に貢献すると同時に、その将来に大きな影響力を持つ存在として、自動車業界において重要な役割を担っているのです。その歴史は、企業買収、資本提携、そして一族経営という複雑な要素が絡み合い、現代の自動車業界における一大叙事詩を形作っています。

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