ポルシェ・944

ポルシェ944：911の後継を目指した挑戦と成功

ポルシェ944は、1983年から1991年にかけて製造された、同社の歴史において重要な位置を占めるスポーツカーです。その開発背景には、911の後継車として開発された928が、サイズが大きすぎたという事情がありました。そこで、924よりも上級、928よりもコンパクトなモデルとして、新たな市場を開拓する目的で944の開発がスタートしました。結果として、944は911とは異なる魅力で成功を収め、ポルシェの経営を支える柱となったのです。

928の系譜を受け継ぐエンジンとハンドリング

944の心臓部であるエンジンは、928のV型8気筒エンジンの片バンクをベースに設計された直列4気筒SOHCエンジンです。924と異なり、全てポルシェ製の部品で構成されている点が大きな特徴です。その後、ターボチャージャーを搭載した944ターボや、DOHC化された944S、排気量を拡大した944S2など、様々なバリエーションが追加されました。

944の大きな魅力は、その卓越したハンドリング性能です。特に、1986年に発売された944ターボは「世界一ハンドリングが良い自動車」と称賛され、同業他社からも注目を集めました。その高い評価は、ポルシェのエンジニアリング技術の高さを証明するものと言えるでしょう。

924カレラGTからの進化と技術的特徴

944のボディデザインは、924カレラGTをモチーフとしています。フロントバンパー下のエアダムや、ブリスターフェンダー、リアスポイラーなど、レーシングカーの血統を受け継いだデザインが特徴です。

また、エンジンのバランスシャフトには、三菱自動車工業が取得していた特許に抵触する問題がありました。この件については、ポルシェが独自開発していたバランスシャフトが、三菱の特許に抵触したと説明しています。最終的には、ポルシェと三菱はそれぞれの特許技術を相互に利用することを認める契約を締結しました。

トランスミッションは、アウディ製の5速MTと3速ATが用意されました。

多様なモデルバリエーションと進化

944は、発売から生産終了までの間に、様々なモデルバリエーションが登場しました。

1983年：ベースモデルである944の発売。2,478ccのSOHCエンジンを搭載し、155PSを発生しました。
1985年：ターボチャージャーを搭載した944ターボが登場。220PSのパワーと強力なトルクにより、スポーツ性能が飛躍的に向上しました。
1987年：DOHCエンジンを搭載した944Sが登場。より高回転型のエンジンにより、よりスポーティな走りを提供しました。
1989年：排気量2,990ccのDOHCエンジンを搭載した944S2が登場。ABSやカブリオレモデルも設定されました。

さらに、限定モデルとして944エクスクルーシブや944クラブスポーツ、944ターボSなどが登場し、それぞれ異なる特徴を持つモデルがラインナップされました。

968へのバトンタッチ

944は、1991年に生産が終了し、後継モデルである968へとバトンタッチしました。約8年間の生産期間中に、数多くの改良やモデルバリエーションを追加し、ポルシェの成功に大きく貢献したモデルと言えるでしょう。944は、ポルシェの歴史において、911とは異なる魅力で成功を収めた重要なモデルであり続け、今日でも多くのファンを魅了し続けています。

もう一度検索