ポルトガル内戦

ポルトガル内戦：立憲主義と絶対主義の激突

1828年から1834年にかけてポルトガル王国で勃発したポルトガル内戦は、王位継承を巡る争いが発端となり、立憲君主主義と絶対君主主義の対立という、当時のヨーロッパ社会の大きな潮流を反映した複雑な内戦でした。自由戦争、兄弟戦争、ミゲリスタ戦争など様々な呼び名を持つこの内戦は、ウィーン体制下のヨーロッパにおける政治的、地政学的緊張を象徴する出来事でもありました。

内戦の勃発：ペドロ4世とミゲル1世の対立

1826年、国王ジョアン6世の崩御により、王位継承問題が浮上しました。ジョアン6世の長男ドン・ペドロは、既にブラジル帝国の初代皇帝ペドロ1世として即位していました。ブラジル独立という状況下で、ペドロのポルトガル王位継承は国内外から大きな反対を招きました。

ペドロは一旦ポルトガル王ペドロ4世として王位を継承しましたが、すぐに7歳の娘マリア・ダ・グロリアに譲位し、自身の弟ミゲル王子と婚約させ、マリアが成人するまでの摂政とすることを決めました。しかし、この決定は絶対王政派の反発を招くことになります。

ペドロ4世は、1822年の憲法を改正し、立憲君主制を強化しました。この新しい憲法は、政府権力を立法府（貴族院と衆議院）、司法権、行政権の三権分立に加え、地方議会も設置するなど、近代的な政治体制を志向したものでした。しかし、地主層や聖職者を中心とした絶対王政派は、この憲法に強い反発を示しました。彼らはブラジルの皇帝であるペドロ4世がポルトガルの政治に介入することに反感を抱き、絶対主義の信奉者であるミゲル王子を支持しました。

スペインのフェルナンド7世も、ナポレオン戦争後の改革を覆そうとしており、絶対王政派を支援しました。1828年2月、外遊から帰国したミゲル王子は、女王マリア2世への忠誠を誓ったかのように振る舞い、摂政の地位に就きました。しかし、これは見せかけに過ぎず、ミゲルは支持者によって国王ミゲル1世として擁立され、立憲政府は打倒されました。

自由主義派の反乱と国際的な介入

ミゲル1世による絶対王政の復活に、自由主義派はポルトで反乱を起こしました。この反乱は各地に波及し、ミゲル1世はこれを武力で弾圧しました。数千人の自由主義者が逮捕されたり、亡命したりしました。この弾圧は5年間にわたって続きました。

一方、ブラジルではペドロ1世と大農園主との関係が悪化し、ペドロ1世は1831年に退位しました。ペドロ1世はポルトガル内戦の終結を目指してイギリスへ渡り、遠征軍を組織し、アゾレス諸島で自由主義者の亡命政府と合流し、イギリスとスペインの支援を得てポルトガルに上陸しました。

激しい戦闘の後、1833年7月、自由主義派はリスボンを奪還。1833年末、マリア・ダ・グロリアはマリア2世として即位し、ペドロ1世が摂政となりました。しかし、自由主義派は都市部を制圧したものの、絶対王政派は地方に潜伏し、残党狩りは1834年まで続きました。

内戦の終結とその後

1834年5月、アセイセイラの戦いでミゲル派が敗北し、ミゲル1世は王位を放棄、ポルトガルから追放されました。ペドロ1世は立憲政府を復活させましたが、同年9月に亡くなりました。その後はマリア2世の治世が始まりましたが、ポルトガル内戦は、ポルトガルの政治体制や国際関係に大きな影響を与え続けました。この内戦は、立憲主義と絶対主義の対立、そして国際社会の思惑が複雑に絡み合った、ヨーロッパ近代史における重要な一端を担っていると言えるでしょう。

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