ポルトベロの海戦

ポルトベロの海戦

ポルトベロの海戦は、1739年11月22日にグレートブリテン王国とスペイン帝国の間で戦われた海戦です。この戦いは、ジェンキンスの耳の戦争の一部であり、イギリス海軍がパナマのポルトベロを占領することを目的としていました。

背景

ポルトベロは、当時スペイン領であったアメリカ大陸における重要な港でした。イギリス海軍のエドワード・ヴァーノン提督は、以前のポルトベロ封鎖の失敗を教訓に、「6隻の船でポルトベロを占領できる」と豪語していました。ジャマイカの要港の指揮官に任命されたヴァーノンは、少数精鋭の艦隊こそが迅速な行動を可能にすると主張し、6隻からなる遠征隊を組織しました。彼は大艦隊では疫病のリスクが高まることも指摘しました。

戦闘の経過

1739年11月20日、ヴァーノン率いるイギリス艦隊はポルトベロ沖に姿を現しました。当初、総攻撃が計画されていましたが、東からの風の影響で、艦隊はトド・フィエロ港への攻撃に集中することになりました。スペイン側はイギリスの奇襲に意表を突かれ、一部の兵士は逃走を始めました。イギリス軍は果敢にも要塞の壁を乗り越え、砲台を守備していたスペイン兵を制圧し、イギリスの旗を掲げました。当初300人いた守備兵のうち、降伏時に残っていたのはドン・フアン・フランシスコ・ガルガンタ率いるわずか40人でした。

トド・フィエロを占領した後、ヴァーノンはサンティエゴ要塞に向けて進軍し、スペインのスループ船1隻を撃沈しました。翌朝、スペイン側は和平を要求し、交渉の末、総督のフランシスコ・ハビエル・マルティネス・デ・ラ・ベガ・イ・レテスは午後に降伏しました。イギリス側の損害は死者3名、負傷者7名という軽微なもので、ポルトベロを占領し、3隻の船を拿捕しました。イギリス軍はポルトベロ市を3週間占領し、その間に要塞や主要な建造物を徹底的に破壊しました。これにより、ポルトベロはスペインの海軍拠点としての役割を終えることになりました。

戦いの影響

ポルトベロ占領のニュースは、アメリカ大陸の植民地時代において、スペインがイギリス商船に対して頻繁に海賊行為を行っていたという背景もあり、イギリスとアメリカの両方で歓迎されました。ポルトベロという名前は、この勝利を記念して様々な場所で使用されるようになりました。

ヴァーノンはイギリスの英雄として称えられ、彼を記念する様々なものが作られました。その一例として、後にジョージ・ワシントンのプランテーションとなったマウントバーノンがあります。ヴァーノンは戦後、海軍大将に昇進しました。彼は当時のロバート・ウォルポール政権の反対派であり、戦前から戦後にかけて、イギリスの敵に対して強硬策を主張していました。しかし、ヴァーノンは次の戦いであるカルタヘナ・デ・インディアスへの大規模な侵攻に失敗し、2万7千人と186隻の船を擁するイギリス軍は、3,500人と6隻の船しかいなかったスペインの提督ブラス・デ・レソに大敗を喫しました。

イギリスによるポルトベロの占領はわずか3週間でしたが、その影響は壊滅的でした。多くの建造物が破壊されただけでなく、スペインはイギリスへの対策として貿易の慣習を変更したため、ポルトベロはほぼ放棄された状態になりました。ポルトベロの経済が回復したのは、2世紀後のパナマ運河建設を待つことになります。

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