ポンペイ最後の日 (ブルワー＝リットンの小説)

『ポンペイ最後の日』解説

エドワード・ブルワー＝リットンが1834年に発表した歴史小説『ポンペイ最後の日』は、西暦79年のヴェスヴィオ火山大噴火によって滅亡した古代ローマ都市ポンペイを舞台に、繰り広げられる愛憎と運命を描いた物語です。作者自身がポンペイを訪れた際の印象をもとに、史実とフィクションを織り交ぜて創作されました。

あらすじ

物語の中心となるのは、正義感に溢れるローマの青年貴族グローカス。彼は、盲目の少女ニディアを助け、その聡明さと献身に心惹かれます。一方、ポンペイを支配しようと企む怪僧アーベイシーズは、妖術を使い人々を欺き、悪事を重ねていました。グローカスは、アーベイシーズに財産を奪われた兄妹を助けるため、その陰謀を暴こうと奔走します。

物語は、グローカスとアーベイシーズの対立を軸に進みます。アーベイシーズはグローカスを陥れようと様々な策略を巡らせ、ついには殺人罪の濡れ衣を着せ、彼を円形闘技場での処刑に追い込みます。しかし、ニディアの機転によってアーベイシーズの悪事が暴かれ、グローカスの無罪が証明されようとしたその時、ヴェスヴィオ火山が噴火します。

火山の大噴火によってポンペイは阿鼻叫喚の地獄絵図と化し、人々は逃げ惑います。グローカスは、混乱の中でアーベイシーズを打ち倒し、ニディアとアイオンを救い出しますが、ニディアはそこで力尽きてしまいます。生き残ったグローカスとアイオンは、二度と戻ることのないポンペイを後に、新たな人生へと歩み出すのでした。

作品の特徴

勧善懲悪の物語: 正義の味方であるグローカスが悪を打ち倒すという、明快なストーリー展開は、読者に爽快感を与えます。
魅力的な登場人物: グローカス、ニディア、アーベイシーズなど、個性豊かな登場人物たちが織りなす人間ドラマは、物語に深みを与えています。
史実に基づいた描写: ポンペイの街並みや当時の生活様式が詳細に描写されており、読者はまるでタイムスリップしたかのような感覚を味わえます。
破滅的な結末: 火山の大噴火というカタストロフによって、物語は劇的な終幕を迎えます。自然の脅威と人間の無力さを感じさせられるでしょう。

日本での受容

日本では、少年少女向けの作品として紹介されることが多く、読みやすい物語として親しまれています。様々な翻訳版が出版されており、現在でも多くの読者に愛されています。

映像化作品

『ポンペイ最後の日』は、これまで何度も映像化されています。

ポンペイ最後の日 - 1913年のイタリア映画。
ポンペイ最後の日 - 1926年のイタリア映画。
ポンペイ最後の日 - 1950年のフランス・イタリア合作映画。
ポンペイ最後の日 - 1959年のイタリア・スペイン・モナコ・西ドイツ合作映画。

1935年の米国映画『ポンペイ最後の日』は、本作に触発されて製作された映画ですが、内容的には本作とは関係のないオリジナル作品です。

まとめ

『ポンペイ最後の日』は、古代ローマを舞台にした壮大な歴史小説であり、エンターテイメント性と文学性を兼ね備えた作品です。正義と悪の対立、愛と憎しみ、そして自然の脅威といった普遍的なテーマを描き出し、読者の心を揺さぶります。まだ読んだことのない方は、ぜひ一度手に取ってみてください。

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