ポーの一族 (1972年の漫画)
バンパネラの一族の物語を描く、萩尾望都の壮大なファンタジー『ポーの一族』シリーズ。その中でも特に重要な位置を占めるのが、1972年に『別冊少女コミック』誌上で発表された本作「ポーの一族」です。この作品は、後にシリーズ名となるほどの核であり、主人公エドガー・ポーツネルが運命の相手アラン・トワイライトと巡り合い、そしてかけがえのない妹メリーベルを喪失するという、物語全体の基盤となる悲劇が描かれています。
物語の舞台は1879年。長年暮らしたポーの村を離れたバンパネラであるエドガーとメリーベル兄妹は、養父母であるポーツネル男爵夫妻と共に、新たな安住の地と仲間を求めて街（シティ）へ移り住みます。そこでエドガーが出会ったのが、貿易商を営むトワイライト家の一人息子、アラン・トワイライトでした。最初はエドガーに対して反感を抱いていたアランでしたが、交流を重ねるうちに次第に心を開き、互いを対等な存在として認め合うようになります。アランは、エドガーから紹介されたメリーベルが、若くして亡くした婚約者に瓜二つであることに強く惹かれ、やがて深い愛情を抱くようになります。
一方、ポーツネル男爵夫妻は、旧知であるカスター老医師の夕食会に招かれた際、鏡に姿が映らないというバンパネラの特性を、その場に居合わせたジャン・クリフォード医師に目撃されてしまいます。これにより、クリフォードは夫妻に対する疑念を抱きますが、後日、教会のミサに出席している姿を見て、その疑いを一時的に晴らします。エドガーもまた、アランと共に砦跡へ出かけた帰り道でアランを襲おうとしますが、アランが聖書の言葉を唱えたことで逃げ帰らざるを得なくなり、彼にも正体を知られる危機を迎えます。しかし翌日、アランから手渡された十字架のペンダントを何気ない様子で受け取ることで、その疑惑を払拭することに成功します。
間もなく、アランは母親レイチェルが倒れたという知らせを受け取ります。長くはないであろう母親のため、伯父夫妻から強引にその娘マーゴットとの結婚を勧められます。これに激しく反発したアランは家を飛び出し、メリーベルのもとへ駆けつけ、衝動的に結婚を申し込みます。メリーベルは一度は戸惑いながらも、それでも彼女を求めるアランに対し、「私たちと共に、時を超えて遠い場所へ行きませんか？」と、バンパネラの世界へ誘う言葉を投げかけます。
それから数日後、帽子店へ出かけたシーラとメリーベルは、カスター老医師の娘でありクリフォードの婚約者であるジェインと出会います。シーラはジェインに似合う帽子を取るため、メリーベルを彼女に預けて家に戻る途中、偶然クリフォードに出くわします。降り始めた激しい雷雨から逃れるため、二人は小さな小屋に身を寄せます。そこで交わした口づけの最中、クリフォードはシーラに脈がないことに気づき、彼女がバンパネラであることを見抜いてしまいます。クリフォードは手にしていたピッチフォークでシーラの胸を突き刺し、致命傷を与えます。瀕死の状態ながらもなんとか家にたどり着いたシーラを目の当たりにしたポーツネル男爵は、すぐに街から逃走することを決意します。時を同じくして、エドガーはメリーベルがまだジェインと一緒にいることを知り、彼女の元へ急ぎます。
しかし、エドガーが駆けつけるよりも早く、ジェインのもとへ戻っていたクリフォードがメリーベルに銀の弾丸を撃ち込み、彼女はその場で光となって消滅してしまいます。一歩遅れて到着し、最愛の妹を失ったエドガーは、メリーベルを奪ったクリフォードをその手に持っていた銃で撃ち殺します。その後、養父母の後を追うエドガーでしたが、負傷した身体に鞭打って馬車を走らせたシーラは力尽きて消滅し、ポーツネル男爵もまた、暴走した馬車の下敷きとなり姿を消します。愛する家族を目の前で立て続けに失ったエドガーは、「もう、メリーベルを守るために生きる必要もない」と、計り知れない悲しみと孤独、そして絶望の淵に突き落とされます。
一方、アランもまた、信頼していた母親が伯父と密会している場面を偶然見てしまい、大きな衝撃を受けます。動転した彼は、思わず伯父を階段から突き落としてしまいます。伯父が死んでしまったと思い込み、予期せぬ事態と、それを見たマーゴットの「人殺し！」という叫び声に動揺したアランは、自室に閉じこもります。その時、エドガーからメリーベルが死んだことを知らされ、彼は深い悲しみに包まれます。全てを失い、旅立とうとするエドガーから誘われたアランは、自らの悲しみと孤独を埋めるかのように、エドガーと共に永遠の旅に出ることを選ぶのでした。
本作は、単行本化される際にシリーズ全体の名称となるほどの重要な作品となり、その後のシリーズ作品、特に1959年の西ドイツを舞台にした「小鳥の巣」へと直接繋がる物語であり、エドガーとアランという二人のバンパネラの長い旅の始まりを描いています。
物語の舞台は1879年。長年暮らしたポーの村を離れたバンパネラであるエドガーとメリーベル兄妹は、養父母であるポーツネル男爵夫妻と共に、新たな安住の地と仲間を求めて街（シティ）へ移り住みます。そこでエドガーが出会ったのが、貿易商を営むトワイライト家の一人息子、アラン・トワイライトでした。最初はエドガーに対して反感を抱いていたアランでしたが、交流を重ねるうちに次第に心を開き、互いを対等な存在として認め合うようになります。アランは、エドガーから紹介されたメリーベルが、若くして亡くした婚約者に瓜二つであることに強く惹かれ、やがて深い愛情を抱くようになります。
一方、ポーツネル男爵夫妻は、旧知であるカスター老医師の夕食会に招かれた際、鏡に姿が映らないというバンパネラの特性を、その場に居合わせたジャン・クリフォード医師に目撃されてしまいます。これにより、クリフォードは夫妻に対する疑念を抱きますが、後日、教会のミサに出席している姿を見て、その疑いを一時的に晴らします。エドガーもまた、アランと共に砦跡へ出かけた帰り道でアランを襲おうとしますが、アランが聖書の言葉を唱えたことで逃げ帰らざるを得なくなり、彼にも正体を知られる危機を迎えます。しかし翌日、アランから手渡された十字架のペンダントを何気ない様子で受け取ることで、その疑惑を払拭することに成功します。
間もなく、アランは母親レイチェルが倒れたという知らせを受け取ります。長くはないであろう母親のため、伯父夫妻から強引にその娘マーゴットとの結婚を勧められます。これに激しく反発したアランは家を飛び出し、メリーベルのもとへ駆けつけ、衝動的に結婚を申し込みます。メリーベルは一度は戸惑いながらも、それでも彼女を求めるアランに対し、「私たちと共に、時を超えて遠い場所へ行きませんか？」と、バンパネラの世界へ誘う言葉を投げかけます。
それから数日後、帽子店へ出かけたシーラとメリーベルは、カスター老医師の娘でありクリフォードの婚約者であるジェインと出会います。シーラはジェインに似合う帽子を取るため、メリーベルを彼女に預けて家に戻る途中、偶然クリフォードに出くわします。降り始めた激しい雷雨から逃れるため、二人は小さな小屋に身を寄せます。そこで交わした口づけの最中、クリフォードはシーラに脈がないことに気づき、彼女がバンパネラであることを見抜いてしまいます。クリフォードは手にしていたピッチフォークでシーラの胸を突き刺し、致命傷を与えます。瀕死の状態ながらもなんとか家にたどり着いたシーラを目の当たりにしたポーツネル男爵は、すぐに街から逃走することを決意します。時を同じくして、エドガーはメリーベルがまだジェインと一緒にいることを知り、彼女の元へ急ぎます。
しかし、エドガーが駆けつけるよりも早く、ジェインのもとへ戻っていたクリフォードがメリーベルに銀の弾丸を撃ち込み、彼女はその場で光となって消滅してしまいます。一歩遅れて到着し、最愛の妹を失ったエドガーは、メリーベルを奪ったクリフォードをその手に持っていた銃で撃ち殺します。その後、養父母の後を追うエドガーでしたが、負傷した身体に鞭打って馬車を走らせたシーラは力尽きて消滅し、ポーツネル男爵もまた、暴走した馬車の下敷きとなり姿を消します。愛する家族を目の前で立て続けに失ったエドガーは、「もう、メリーベルを守るために生きる必要もない」と、計り知れない悲しみと孤独、そして絶望の淵に突き落とされます。
一方、アランもまた、信頼していた母親が伯父と密会している場面を偶然見てしまい、大きな衝撃を受けます。動転した彼は、思わず伯父を階段から突き落としてしまいます。伯父が死んでしまったと思い込み、予期せぬ事態と、それを見たマーゴットの「人殺し！」という叫び声に動揺したアランは、自室に閉じこもります。その時、エドガーからメリーベルが死んだことを知らされ、彼は深い悲しみに包まれます。全てを失い、旅立とうとするエドガーから誘われたアランは、自らの悲しみと孤独を埋めるかのように、エドガーと共に永遠の旅に出ることを選ぶのでした。
本作は、単行本化される際にシリーズ全体の名称となるほどの重要な作品となり、その後のシリーズ作品、特に1959年の西ドイツを舞台にした「小鳥の巣」へと直接繋がる物語であり、エドガーとアランという二人のバンパネラの長い旅の始まりを描いています。
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