ポータブル赤道儀

ポータブル赤道儀：手軽に星空を撮影するためのツール

ポータブル赤道儀は、その名の通り持ち運び可能な小型の赤道儀です。都市部の光害から離れた場所で美しい星空の撮影をするために設計されており、近年天文ファンを中心に広く利用されています。従来の大型赤道儀と異なり、コンパクトで軽量な設計が特徴で、バイクや公共交通機関での移動も容易です。

ポータブル赤道儀の主な特徴

ポータブル赤道儀にはいくつかの共通した特徴があります。まず、小型軽量であるため、持ち運びが容易です。多くの機種は写真用三脚と併用でき、設置も簡単です。また、大型の望遠鏡は付属せず、ガイド撮影のための小型の鏡筒を搭載するか、あるいは鏡筒は付属しない場合もあります。極軸望遠鏡を備え、短時間で正確な極軸合わせができるのも大きな利点です。カメラ雲台を搭載できる三脚座を備えていることも、ポータブル赤道儀に共通する特徴です。

ただし、機種によってはこれらの特徴をすべて満たしていないものもある点には注意が必要です。

代表的なポータブル赤道儀

現在、様々なメーカーからポータブル赤道儀が販売されています。代表的な機種としては、以下のものがあります。

ユニテック株式会社: SWAT-mini、SWAT-200、SWAT-300、SWAT-350
高橋製作所: TS-40H型、スカイキャンサー、スカイパトロール
五藤光学研究所: スカイグラフ
ケンコー: スカイメモST、スカイメモNS、スカイメモR
ビクセン: GPガイドパック、ポラリエ
アイベル: CD-1、CD-2
AstroTrac: TT320X-AG
株式会社ゼロ: TOAST、TOAST-Pro

さらに、ゼンマイ駆動で音楽を奏でながら追尾するユニークな機種「MusicBox EQ」も登場しています。軽量コンパクトで電池不要というメリットがありますが、ゼンマイの巻き上げで5～6分の駆動時間という制約があります。

大型赤道儀のポータブル化

一部の大型ドイツ式赤道儀は、赤緯体を外すことでポータブル赤道儀として使用できるようになっています。高橋製作所のスペースボーイやPM-1、五藤光学研究所のマークXなどがその例です。ビクセンのGPガイドパックも、GP赤道儀から赤緯体を外したものです。

デジタル時代におけるポータブル赤道儀

銀塩フィルム時代には、20分から40分の長時間露光が必要でした。そのため、ポータブル赤道儀は多くの天文ファンによって愛用されていました。しかし、デジタル一眼レフカメラの普及により、短時間露光でも高画質の画像が得られるようになったことから、ポータブル赤道儀は比較的焦点距離の短いレンズを使った星座写真の撮影に多く使われるようになりました。

「ポータブル赤道儀」の定義について

三鷹光器のGN-170やペンタックスのMS-5シリーズなど、大型のドイツ式赤道儀を「分解して自動車に搭載できる」という意味で「ポータブル赤道儀」と呼ぶ場合がありますが、これは従来のポータブル赤道儀とは異なるカテゴリーに属します。

参考文献

月刊天文別冊『天体望遠鏡のすべて'81年版』地人書館
月刊天文別冊『天体望遠鏡のすべて'83年版』地人書館
月刊天文別冊『天体望遠鏡のすべて'85年版』地人書館
月刊天文別冊『天体望遠鏡のすべて'87年版』地人書館
* 天文ガイド別冊『ポータブル赤道儀の作り方』誠文堂新光社

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