ポール・ムニ

ポール・ムニについて

ポール・ムニ（Paul Muni）は、1895年にオーストリア＝ハンガリー帝国のリヴィウでユダヤ系の家庭に生まれました。本名はメシレム・マイエル・ヴァイゼンフロイント（Meshilem Meier Weisenfreund）です。彼の家族は、彼がわずか7歳の時にアメリカに移住しました。両親はイディッシュ演劇に従事しており、ムニは12歳で早くも舞台に立つようになります。この背景から、彼の演技への興味は早くから育まれていたのです。

ブロードウェイへの道は、29歳で始まりますが、彼が英語で舞台に立つようになったのは、この年からでした。1929年にはFOXと契約し、映画『The Valiant』でアカデミー賞にノミネートされるなど、その才能を広く認識されることとなります。しかし、彼は途中でブロードウェイに戻る選択をしました。

1932年、監督ハワード・ホークスの要請で出演した映画『暗黒街の顔役』において、その凄みのある演技で一躍スターとなります。その後、ワーナー・ブラザースとの契約を結び、1936年には映画『科学者の道』でアカデミー主演男優賞を受賞。さらに、同作品でヴェネツィア国際映画祭の男優賞も獲得しました。彼は映画と舞台の両方で活躍し続け、1956年にはトニー賞を受賞するに至ります。

ムニの代表作と言えば、1959年の『The Last Angry Man』です。彼はこの作品で5度目のアカデミー賞ノミネートを記録しましたが、その後は引退の道を選びました。出ていた映画は25本ほどに過ぎないものの、アカデミー賞に5回もノミネートされたことは、彼の演技に対する真摯な姿勢を物語っています。

演技については、彼自身の役作りに細心の注意を払い、特にシリアスなキャラクターを演じる際には情熱をもって取り組んでいました。ですが、彼の性格は気難しいところがあり、撮影現場では時折バイオリンを演奏することでリラックスした雰囲気を作り出す一方、赤い服を着ている人を見かけると怒ってしまうという一面もありました。このような独特の性格には、彼の芸術家としての深い感受性が影響していたのかもしれません。

彼が1941年に契約上の問題からワーナーを離れた後、演じる予定だった映画『ハイ・シェラ』の役は、後にハンフリー・ボガートが受け継いで成功を収めました。これは、ムニの事務的なトラブルが映画界にどのような影響を与えるかを示すエピソードです。

プライベートでは、彼の妻はイディッシュ女優のベラ・フィンケルであり、彼女は指揮者マイケル・ティルソン・トーマスの祖父にあたるボリス・トマシェフスキーの妹の娘です。家族の内幕にはドラマがあり、ベラの父であるモイシェ・フィンケルは妻を銃で傷つけた後、自らも命を絶ってしまいます。このような背景は、ムニにとっても複雑な家庭環境をもたらしたことでしょう。

ポール・ムニの生涯は、映画と舞台の両方で数々の業績を残したものの、彼の独特な性格や背景には、彼自身の演技にも影響を及ぼしたであろうさまざまな要因がありました。

もう一度検索