ポール・ルヌアール

シャルル＝ポール・ルヌアール（1845年11月5日 - 1924年1月2日）は、フランスの画家、版画家として知られています。

生涯

1845年、フランス北中部のロワール＝エ＝シェール県ブロワのクル＝シュヴェルニで、職人の六男として生まれました。1859年にパリに移り、生計を立てるためにパリ国立高等美術学校（エコール・デ・ボザール）で働きます。そこで製図技師としての能力を認められ、1868年に正式にボザールに入学。イジドール・ピルスに師事し、パリの歌劇場ガルニエ宮の室内装飾を手伝いました。

その後、新聞「イリュストラシオン」や雑誌「パリ・イリュストレ」に数多くの挿絵を提供し、ルポルタージュの素描家として人気を博します。1889年と1900年のパリ万博では2度の金賞を獲得するなど、描写力や芸術性も高く評価されました。

1893年にはレジオンドヌール勲章を授与され、1903年にはパリの国立高等装飾美術学校の教授に就任。1924年にパリで亡くなり、故郷ブロワの墓地に埋葬されました。

日本への影響

明治時代初期にパリで美術商として活躍した林忠正は、日本美術をヨーロッパに紹介する一方で、日本の美術界に西洋美術の持つ精緻な再現力や描写力を学ばせようとしました。そこで、素描に定評のあるルヌアールに注目し、フランスに留学している日本人画家に紹介するため、1894年にパリで「ポール・ルヌアール版画・素描展」を開催。この展覧会のために林が集めたコレクションは、遺族から東京国立博物館に寄贈されています。

また、1930年にフランス第三共和政を題材としたノンフィクション『ドレフュス事件』を発表した大佛次郎も、ルヌアールの制作した版画集をコレクションしていました。版画集『ドレフュス事件』(1899年) と『動き、身振り、表情』(1907年) に所収されている約300点の作品は、現在、大佛次郎記念館が所蔵しています。

2006年には、林忠正の没後100年を記念し、東京国立博物館で「林忠正コレクション ポール・ルヌアール展」が開催されました。

シャルル＝ポール・ルヌアールは、その卓越した描写力と芸術性で、フランスのみならず日本の美術界にも影響を与えた重要な画家、版画家です。

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