マイアミ2017

マイアミ2017 (Miami 2017 (Seen the Lights Go Out on Broadway))

ビリー・ジョエルの「マイアミ2017」は、1976年のアルバム『ニューヨーク物語』のラストを飾る楽曲です。この曲は、ニューヨークの荒廃という衝撃的なテーマを扱い、彼の音楽の中でも特異な存在感を放っています。ライブ演奏も多く、チャリティイベントなど特別な機会に披露されることも少なくありません。

楽曲の背景

1970年代、ビリー・ジョエルはロサンゼルスで音楽活動を行っていましたが、その後ニューヨークに戻り、アルバム『ニューヨーク物語』を制作しました。このアルバムには、「さよならハリウッド」や「ニューヨークの想い」など、彼の心境の変化が色濃く反映されています。

「マイアミ2017」は、ニューヨークで起こる大災害を描いたSFソングとして、ジョエル自身によって語られています。この曲のインスピレーションの源泉は、1970年代のニューヨーク市の財政危機でした。1975年、ニューヨーク市は財政破綻の危機に瀕し、連邦政府に支援を求めましたが拒否されます。この時、ニューヨーク・デイリーニューズ紙には「Ford to City: Drop Dead（フォード大統領からニューヨーク市へ：さっさとくたばれ）」という衝撃的な見出しが掲載されました。

当時ロサンゼルスにいたジョエルは、ニューヨークの混乱を嘲笑する人々を見て、「もしニューヨークが廃墟になったら、故郷に戻ろうか」と考えたそうです。「マイアミ2017」は、まさにその光景を描いた曲であり、ジョエルは「摩天楼は崩れ落ち、恐ろしい大火がニューヨークを襲う」と表現しています。タイトルにある「マイアミ2017」は、大災害後に多くのニューヨーカーがマイアミへ移住し、語り手が2017年になって孫に当時の惨状を語るという世界観を示しています。

楽曲の評価と象徴性

「マイアミ2017」は、その独特な世界観と、ニューヨークへの深い愛情が込められた歌詞によって、多くの人々に愛されています。特に、2001年のアメリカ同時多発テロ事件以降、この曲は特別な意味を持つようになりました。

歌詞には「エンパイア・ステート・ビルディングが倒れるのを見た」「巨大な摩天楼が崩れ落ちるのを見た」というフレーズが登場します。同時多発テロ事件では、世界貿易センタービルが崩壊し、多くの人命が失われました。この事件後、ジョエルはチャリティコンサートでこの曲を演奏し、「私は25年前にこの曲を作った。この曲はこのまま空想の歌になっていくのだろうと思っていた。まさか現実のことになろうとは。しかしこの曲の結末とは違い、我々はどこにも逃げたりしない！」と語り、観客から大きな喝采を浴びました。

この曲は、ニューヨークの象徴である高層ビルの崩壊を描くことで、人々に深い悲しみと同時に、困難に立ち向かう勇気を与えています。

カバーとライブ演奏

「マイアミ2017」は、リチャード・マークスによってカバーされたこともあります。また、ビリー・ジョエルの楽曲をフィーチャーしたミュージカル『Movin' Out』でも使用されました。

ライブ演奏は、様々な形でメディア化されており、ジョエルのパフォーマンスを堪能することができます。

「マイアミ2017」は、単なるSFソングではなく、ニューヨークへの愛と、困難な時代を生き抜く人々の心を歌った、普遍的なメッセージを持つ楽曲と言えるでしょう。

もう一度検索