マイクロ波着陸装置

マイクロ波着陸装置（MLS）について

マイクロ波着陸装置、通称MLS（Microwave Landing System）は、航空機の着陸を支援するための地上施設です。このシステムは、航空機に精確な位置情報を提供し、滑走路への進入を安全に行うことを目的としています。

背景と開発の経緯

従来の計器着陸装置（ILS）は、滑走路の延長線上に沿った直線的な進入のみを支援するため、周囲の騒音問題が深刻でした。このため、運用時間や離着陸機の数に制約が生じることがあったのです。そのため、ICAO（国際民間航空機関）は1970年にMLSの方式を確立し、1995年以降は国際的なスタンダードとして採用されました。初期の5年間はILSとMLSの並行利用が行われ、その後ILSは順次撤去されていく計画がありました。

特徴

MLSの主な特徴は、角度情報を放射された電波から取得するため、滑走路の延長線上に制約されないことです。これにより、障害物があってILSが設置できない空港でも安全なアプローチが可能になります。

さらに、MLSは高精度な誘導を提供し、VHF帯の放送局からの電波干渉を受けることもありません。角度情報は単一の電波を受信することで得られるため、システムの運用は効率的です。

MLSの構成要素

MLSは主に以下のような基本装置と拡張装置から構成されており、5GHz帯の電波を使用して航空機に情報を提供します。

• - 基本装置

- AZ（方位誘導装置）
- EL（高低誘導装置）
- DME（距離測定装置）

• - 拡張装置

- BAZ（後方方位誘導装置）
- FE（引き起こし誘導装置）
- DME/P（精密距離測定装置）

動作の仕組み

MLSは、地上設備から40度の範囲を持つビームを左右に放射します。この電波は航空機に着陸の進入路を知らせ、航空機側で受信した信号のタイミングを計測することで、角度情報を把握する仕組みです。具体的には、AZ装置が水平方向の方向を示し、EL装置が垂直方向の情報を提供します。BAZ装置は、滑走路への進入を補完する役割を果たします。

特に、EL装置からのビームは着陸時の安全性を高めるために高い頻度で放射され、航空機の高度情報を精確に伝えます。

また、距離情報については、従来のDMEや新たに導入された高精度のDME/Pにより提供され、航空機は着陸基準点までの距離を把握することができます。

日本における位置づけ

日本の電波法施行規則では、MLSはマイクロ波着陸方式として明確に定義されています。しかし、日本の航空法や関連法規には、MLSに関する具体的な規定が存在しないため、実際の運用には注意が必要です。

結論

マイクロ波着陸装置は、航空機の誘導精度を向上させ、効率的かつ安全な着陸を実現するための重要なシステムです。将来的な普及が期待される一方で、現在はまだ限られた空港での導入にとどまっています。航空業界において無音で安全な環境を実現するための新たな選択肢として、MLSの発展が望まれます。

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関連項目

• - 計器着陸装置（ILS）
• - 距離測定装置（DME）

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