マイクロ精機

マイクロ精機：オーディオ黄金期を彩ったメーカーの光と影

マイクロ精機は、かつて日本に存在したオーディオ機器メーカーです。特にレコードプレーヤーで高い評価を得ていましたが、その歴史は技術革新と労使関係の葛藤に彩られています。

設立と発展

1961年、小宮康策氏によって設立されたマイクロ精機は、当初、時計や計測機器の部品も製造していました。しかし、1968年からはレコードプレーヤーとその関連製品に特化し、高度経済成長の波に乗り、最盛期には月産1万3000台を誇るまでに成長しました。その製品は海外へも輸出され、特にヨーロッパでは高級オーディオブランドとしての地位を確立しました。

1976年には、70年前の蓄音機を復元した「フォノグラフ」を発売し、大きな話題を呼びました。さらに、家庭にある古い蓄音機の修理も請け負うと発表し、オーディオファンからの注目を集めました。

CDの普及と新たな挑戦

1980年代に入り、コンパクトディスク（CD）が普及し始めると、マイクロ精機も1986年にCDプレーヤーを発売しました。しかし、アナログプレーヤーの開発も継続し、回転時にプラッターを空気で浮上させる機構や、ディスクを吸着させる機構を導入することで、振動を徹底的に排除した高級機を開発しました。これらの技術は、プレーヤー開発で培ったノウハウを生かしたものでした。

また、マイクロ精機はオーディオ技術を応用し、産業技術分野にも進出しました。三菱製鋼と共同で開発した精密回転テーブルや、空気を利用した振動防止装置など、精密機器の製造・検査用途に向けた製品を開発し、新たな市場を開拓しました。

終焉と労使関係

2000年代以降も、マイクロ精機は書類上は存続していましたが、2015年1月にみなし解散の登記がなされました。

マイクロ精機の歴史を語る上で避けて通れないのが、労使関係の問題です。1978年12月に総評全国一般労働組合東京地方本部の分会としてマイクロ精機分会が結成された後、会社側が組合員に対して脱退を促すなど、関係が悪化しました。1979年の春闘では、会社側と組合員が衝突し、負傷者が出る事態となりました。会社側は、暴力事件の再発が保証されない限り、団体交渉に応じない姿勢を示しました。

東京都地方労働委員会は、会社側に対し団体交渉を拒否しないよう命じましたが、会社側はこれを不服とし、東京地裁に命令の取り消しを求める訴訟を起こしました。1983年12月、東京地裁は組合側による暴力行使の蓋然性が高いことを理由とした団体交渉拒否は正当であるとしながらも、本件においては会社側の硬直姿勢が一因であり、暴力行使の蓋然性が高いとはいえないとして、会社側の団体交渉拒否は不当労働行為であると判断しました。

1986年に蓮田市に工場を移転した際には、労働組合の同意を得ずに移転を強行したとして、従業員が損害賠償を求める訴訟を起こすなど、労使間の対立は最後まで解消されることはありませんでした。

マイクロ精機は、高度な技術力でオーディオ業界に貢献した一方で、労使関係という課題を抱えながら、その歴史に幕を閉じました。その足跡は、日本のオーディオ史における光と影を象徴していると言えるでしょう。

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