マイケル・アンジェロ・ルーカー

マイケル・アンジェロ・ルーカー（Michael Angelo Rooker ARA）は、18世紀後半のイギリスで活躍した画家、そして優れた版画家でした。1746年、あるいは1743年にロンドンで生を受け、1801年3月3日にその生涯を終えています。彼は主に、建築物を配した風景画や単体の風景画を、油彩、水彩といった様々な技法で描きました。また、版画の技術を駆使して、書籍の挿絵や単体の版画作品も数多く手掛けています。

ルーカーは芸術的な才能を持つ家庭に育ちました。父エドワード・ルーカー（1712年頃 - 1774年）もまた版画家であり、息子であるマイケルにこの技術の基礎を教えました。その後、彼はロンドンにあった芸術教育機関、セント・マーティンズ・レーン・アカデミーや、権威あるロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ付属の美術学校で本格的に絵画を学びます。ここでは、水彩風景画の先駆者の一人であるポール・サンドビーに師事し、風景を描く技術を磨きました。

彼のキャリアは着実に進みました。1765年にはロンドンの展覧会に作品を出品し、注目を集め始めます。1768年には、著名な風景画家リチャード・ウィルソンがイタリアで描いたヴィッラ・アドリアーナの風景を基にした版画を制作し、出版しました。これは彼の版画家としての力量を示す初期の例と言えるでしょう。そして、1770年には、ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツの準会員に選ばれる栄誉を得ました。アカデミーの展覧会にはその後も継続して作品を出品し、1772年にはロンドンのテンプル・バーという街並みを描いた作品を発表しています。

版画家としてのルーカーは、特に書籍や雑誌の挿絵の分野で活躍しました。ジョージ・カーズリーが刊行した「Copperplate Magazine」、そしてその後に続いた「The Virtuosi's Museum」といった当時の人気雑誌に挿絵を提供しています。さらに、由緒あるオクスフォード大学が発行する年鑑「Oxford Almanack」の表紙絵も長年にわたり担当し、その描写力と構成力は高く評価されました。

絵画や版画制作と並行して、ルーカーは劇場美術の分野でも重要な役割を担いました。ロンドンのヘイマーケット劇場で、彼は長きにわたり舞台美術家として働き、多くの演目の背景や装置デザインを手掛けました。

彼の絵画作品において、特に評価が高いのは、1780年代後半から制作された、イギリス各地を旅して描かれた建物のある風景画です。ノーフォーク、サフォーク、サマセット、ウォリックシャーといった地域を訪れ、その地の特徴的な建築物と周囲の自然を組み合わせた情感豊かな風景を描き出しました。

長年勤めたヘイマーケット劇場を離れた後、ルーカーは突然の病により急逝しました。彼の死後、イギリスを代表する風景画家となるジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー（1775-1851）が、ルーカーの作品を非常に高く評価していたことが知られています。ターナーはルーカーの没後に、10点以上の作品を購入したと伝えられており、これはルーカーの芸術が同時代の著名な画家からも認められていた証と言えるでしょう。マイケル・アンジェロ・ルーカーは、18世紀イギリスにおける風景画と版画の分野で、確かな足跡を残した芸術家です。

もう一度検索