マイケル・オストログ

マイケル・オストログ：詐欺師から切り裂きジャック容疑者へ

マイケル・オストログ（Michael Ostrog, 1833年? - 1904年以降）は、19世紀後半にイギリスで暗躍したロシア出身の詐欺師、泥棒です。その生涯は、窃盗や詐欺といった犯罪行為で彩られており、当時の警察記録にその名が刻まれています。

生い立ちと犯罪歴

オストログの生い立ちは謎に包まれています。1833年頃にロシアで生まれたという情報以外、幼少期の詳細はほとんど不明です。彼がイギリスで初めて警察の記録に登場するのは、1863年のオックスフォード大学での強盗事件です。この時、彼はマックス・グリーフという偽名を使っており、逮捕後、10ヶ月の拘禁刑を言い渡されました。

その後も、1864年にケンブリッジ市内での詐欺事件で3ヶ月、同年12月には別の詐欺罪で8ヶ月の拘禁刑を受けています。1866年8月には、メイドストーンの宝石店から金時計を盗む強盗事件で逮捕され、7年間服役しました。1873年に釈放された後も、すぐに窃盗を繰り返し逮捕されています。この時は、警察官に抵抗し、発砲未遂事件を起こし、強盗、侮辱、殺人未遂の罪で10年の拘禁刑判決を受けました。1883年に釈放された後も、窃盗を繰り返し、1887年にはクリケット大会のトロフィーを盗み、6ヶ月の拘禁刑を受けています。

1888年3月、オストログは再び釈放されました。当局は彼の盗癖は治ったとみなしていましたが、ポリス・ガゼット誌の記事では、彼は非常に危険な人物だと論じられていました。同年9月にはフランスに渡り、パリで強盗を働いて逮捕されています。その後、イギリスに戻ると、1891年にサリーの精神病院に収容されました。この隔離処置後も、窃盗、詐欺、その他の不正行為で定期的に刑務所に入る記録が残っています。しかし、1904年を境に記録が途絶え、この頃に亡くなったと推測されています。

詐欺師としての手腕

オストログは、詐欺行為を成功させるために、様々な変装、偽名、肩書きを使い分けました。また、自身に謎めいた雰囲気を醸し出すために、自分の生活や活動に関する嘘を数多く流布しました。中でも有名なのは、ロシア海軍の元軍医という肩書きです。しかし、これは彼が作り上げた数多くの嘘の一つに過ぎません。

切り裂きジャック事件との関わり

切り裂きジャック事件当時、ロンドン警視庁の捜査主任であったメルヴィル・マクノートンは、有力容疑者3人の名前を記したメモを作成しました。その中の一人がマイケル・オストログでした。このメモ以降、オストログは切り裂きジャック事件の容疑者として名前が挙がるようになります。しかし、当時の捜査官たちは、彼が過去に凶悪犯罪を犯した証拠を見つけることはできませんでした。オストログはあくまで窃盗や詐欺を行う、いわゆるホワイトカラーの犯罪者でした。

2001年、切り裂きジャック事件の専門家であるフィリップ・サグデンは、1888年にオストログがフランスで軽犯罪で逮捕され、収監されていたという警察記録を発見しました。これにより、マクノートンのメモ以来、オストログに掛かっていた切り裂きジャック容疑は晴れることになりました。

まとめ

マイケル・オストログは、生涯にわたり窃盗や詐欺を繰り返した犯罪者でした。切り裂きジャック事件の容疑者の一人として名前が挙がった時期もありましたが、最終的には事件への関与は否定されています。彼の人生は、犯罪と嘘で彩られた、謎に満ちたものでした。

参考資料

Biography of Michael Ostrog with some photos of the suspect
Michael Ostrog (b. 1833, suspect) on the digital site Casebook: Jack the Ripper

関連項目

* 切り裂きジャックと疑われた者たち

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