マイルストーンズ (マイルス・デイヴィスのアルバム)

アルバム『マイルストーンズ』の概要

『マイルストーンズ』(Milestones)は、アメリカのジャズトランペット奏者マイルス・デイヴィスがリリースしたスタジオアルバムで、1958年にコロムビア・レコードから登場しました。この作品は、デイヴィスの「最初の偉大なクインテット」を基盤に、メンバーを増強したセクステットによって録音されています。ジャズ界において、革新性をもたらしたこのアルバムは、モーダル・ジャズの重要な作品と位置づけられています。

背景と制作

1958年は、テナーサックス奏者ジョン・コルトレーンがデイヴィスのグループに戻った年でもあります。この年、デイヴィスはモーダル・ジャズの理念に基づく作品に取り組み、『マイルストーンズ』は、その重要な一部を成しています。デイヴィスは、長調や短調にとらわれない音階を使い、自由な表現を追求しました。

アルバムに収録されている「シッズ・アヘッド」は、デイヴィスがトランペットを演奏しながら、ピアノも弾くというユニークなスタイルが特徴的です。この曲では、ガーランドが不在のため、サクソフォーン奏者のソロを支える伴奏としてピアノが用いられています。また、「ビリー・ボーイ」では、リズムセクションがメインのソロを披露し、曲の多様性を感じさせます。

音楽的評価

『マイルストーンズ』は、そのリリース以降、音楽評論家から高い評価を受けています。オールミュージックのトム・ジュレックは、このアルバムをビバップとポストビバップの流れにおける古典的な作品と位置付け、特に「マイルストーンズ」のタイトル曲は、ジャズにモダニズムを持ち込んだ重要な作品であると称賛しています。また、ポップマターズのアンディ・ハーマンは、本作が『カインド・オブ・ブルー』よりも攻撃的なスウィング感を示していると述べ、コルトレーンとキャノンボール・アダレイの演奏の相互作用が、各プレイヤーをより高い水準へと引き上げたと表現しています。

また、All About Jazzのジム・サンテラは、デイヴィスが選んだメンバーの質を称え、『マイルストーンズ』がジャズの歴史において重要な役割を果たしたアルバムであると指摘しています。『The Penguin Guide to Jazz』も本作を非常に偉大なモダン・ジャズの一環として評価し、その重要性を改めて認識させるアルバムとなりました。

ステレオ音源の登場

『マイルストーンズ』は当初モノラル版で発表されましたが、後に疑似ステレオも登場しました。CDフォーマットの普及に伴い、オリジナルのリミックスやリマスターが行われ、このアルバムでもデジタル化された音源が作成されました。1980年代半ばには、オリジナル・テープから発見された2曲がステレオとしてリリースされましたが、全曲をステレオで楽しめるようになったのは、2001年まで待たなければなりませんでした。この際、新たに見つかった録音資料が重視され、全曲のステレオ版が再リリースされたのです。

収録曲と演奏者

サイド 1

• - ドクター・ジャックル - "Dr. Jekyll"（5:55）
• - シッズ・アヘッド - "Sid's Ahead"（13:13）
• - トゥー・ベース・ヒット - "Two Bass Hit"（5:19）

サイド 2

• - マイルストーンズ - "Miles"（5:49）
• - ビリー・ボーイ - "Billy Boy"（7:19）
• - ストレイト、ノー・チェイサー - "Straight, No Chaser"（10:41）

さらに、CDリイシュー版にはボーナストラックがあり、別テイクも追加されています。

このアルバムのメンバーには、マイルス・デイヴィス、コルトレーン、キャノンボール・アダレイなどが名を連ね、素晴らしい演奏を展開しています。そのため、ジャズの歴史における位置づけがいかに重要であるかを改めて感じることができる作品です。

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