マウス・オン・マーズ

マウス・オン・マーズ (Mouse on Mars)

1993年にヤン・ヴェルナーとアンディ・トーマによって結成された、ドイツ出身の電子音楽デュオ。彼らの音楽は、単一のジャンルに留まらず、IDM、ダブ、クラウトロック、ブレイクビーツ、アンビエントなど、多様な電子音楽の要素を巧みにブレンドしている点が特徴です。また、オーガニックなアナログシンセサイザーと、クロス・フリクエンシー・モデュレーション（周波数変調）を多用することで、独特の音響空間を創造しています。

音楽性

マウス・オン・マーズの音楽は、電子音だけでなく、弦楽器、ホーン、ドラム、ベース、ギターなどの生楽器も積極的に取り入れている点も魅力の一つです。初期の作品は、主にクラウトロック、ダブ、テクノ、アンビエントの影響が強く、ボーカルはほとんど含まれていませんでした。しかし、近年では、ゲスト・アーティストのボーカルをフィーチャーすることも増え、音楽性の幅を広げています。

略歴

ケルン出身のヤン・ヴェルナーとデュッセルドルフ出身のアンディ・トーマは、幼馴染であり、偶然にも同じ日に同じ病院で生まれたというエピソードを持っています。1990年代半ばから電子音楽の制作に携わり、1994年にイギリスのレコード・レーベル「Too Pure」からファースト・アルバム『Vulvaland』をリリースしました。このアルバムは、テクノ、ダブ、クラウトロックの実験的な要素と、アンビエントのテクスチャが融合した作品として評価されています。

セカンド・アルバム『アイアオラ・タヒチ』では、より遊び心のあるエレクトロニック・ダンスの要素を取り入れ、幅広い音楽性を展開しました。その後も、彼らはサウンドに暖かさ、遊び心、そして「幻想的な分析」と自ら呼ぶ要素を加えながら、独自の音楽性を追求し続けました。2000年にリリースされた6枚目のアルバム『ニウン・ニグン』では、生楽器の使用がより顕著になり、その後のアルバムでもこの傾向が続きました。

近年の活動

2012年には、モードセレクターのレコード・レーベル「Monkeytown」から10枚目のフル・アルバム『パラストロフィックス』をリリース。2018年には、スリル・ジョッキーに戻り、『ディメンショナル・ピープル』を発表しました。このアルバムのリリース後、彼らはディメンショナル・ピープル・アンサンブル名義で、ロボット工学とヒューマノイドによって演奏される、ドラム、ホーン、ストリング、ボーカル、電子楽器のアンサンブルを披露しました。

コラボレーション

マウス・オン・マーズは、ステレオラブ、ザ・フォールのマーク・E・スミスなど、多くのアーティストとコラボレーションを行っています。ステレオラブとは、スタジオでの共同作業やツアーを通じて親交を深め、その成果は、ステレオラブのアルバム『ドッツ・アンド・ループス』や、マウス・オン・マーズのEP『Cache Cœur Naïf』で聴くことができます。

また、2007年には、マーク・E・スミスとのコラボレーション・バンド、ヴォン・スーデンフェッドを結成し、アルバム『Tromatic Reflexxions』をリリースしました。2012年には、ダオ・アン・カーン、エリック・D・クラーク、ラス・ケリーズらと共同でミニ・アルバム『WOW』を制作するなど、多岐にわたるコラボレーションを展開しています。

ソロ活動とレーベル運営

ヤン・ヴェルナーは、ソロ・プロジェクトや、オヴァルのマーカス・ポップとのコラボレーションなど、幅広い活動を展開しています。また、マウス・オン・マーズは、自分たちの作品や他のドイツ人アーティストの作品をリリースするために、レーベル「Sonig」を設立し、運営しています。

マウス・オン・マーズは、常に新しい音楽の可能性を追求し、実験的なサウンドと革新的なアイデアで、電子音楽の分野に大きな影響を与え続けています。

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