マウリツィオ・アリバベーネ

マウリツィオ・アリバベーネ。この名は、F1界とサッカー界、両方の舞台で活躍したイタリア人実業家の名を象徴的に表しています。1957年生まれ、イタリアのブレシア出身のアリバベーネ氏は、華々しいキャリアを歩んできました。

そのキャリアの出発点は、世界的なタバコ企業、フィリップモリスでした。1997年に入社後、約20年に渡りマーケティング部門で手腕を発揮します。2007年には、マールボロブランドのグローバルコミュニケーション＆プロモーション部門の副社長に就任。この頃より、フィリップモリスがメインスポンサーを務めていたスクーデリア・フェラーリとの関係が深まりました。フェラーリへの関与は、スポンサー代表としてのF1委員会への参加、そしてサッカーの名門クラブ、ユヴェントスFCでの役員就任へと繋がります。

アリバベーネ氏のフェラーリとの関わりが、本格的なものとなるのは2014年のことでした。その年、フェラーリはシーズンを通して勝利を掴むことができず、チーム再建の必要に迫られていました。そして2014年11月24日、アブダビGP最終戦の翌日、フェラーリの新たな会長に就任したセルジオ・マルキオンネ氏から、アリバベーネ氏にチーム代表就任のオファーが届きます。フェラーリ社外からの、しかもビジネス界出身者という異例の人事でした。

新チーム代表として、4度のワールドチャンピオン、セバスチャン・ベッテルを擁するフェラーリは、最強チームメルセデスへの挑戦を続けます。2017年にはシーズン前半、メルセデスと互角の戦いを展開するも、後半戦は失速。そして2018年も同様の展開となり、さらに同年7月にはマルキオンネ会長が急逝。この出来事が、アリバベーネ氏とテクニカルディレクターのマッティア・ビノット氏との確執を表面化させました。最終的に、2019年1月7日、ビノット氏が新チーム代表に就任することが発表され、アリバベーネ氏はフェラーリを去ることとなりました。

その後、アリバベーネ氏は2021年7月、セリエAの名門クラブ、ユヴェントスFCのCEOに就任します。しかし、この就任は長くは続きませんでした。2022年11月、ユベントスFCの不正会計疑惑が発覚。取締役会メンバー全員が辞任するという事態の中、アリバベーネ氏もCEOの座を降りることになります。

このように、アリバベーネ氏のキャリアは、F1とサッカーという異なる世界のトップレベルでの活躍、そして成功と挫折の両面を経験した、波乱に満ちたものでした。フィリップモリスでの長年のマーケティング経験、そしてフェラーリでのチームマネジメント、ユベントスでのCEO経験は、いずれも彼の実績として、ビジネス界に大きな足跡を残しています。 彼の経歴は、世界的な企業戦略やチーム運営、そしてスポーツビジネスにおけるリーダーシップを研究する上で、貴重なケーススタディとなるでしょう。

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