マエ持ち女二人組

マエ持ち女二人組

『マエ持ち女二人組』は、乃南アサによる連作短編小説集で、日本の女性たちが抱える運命的な過去を描いた作品です。このシリーズは、全3作にわたり、2005年から2012年まで『小説新潮』と『yom yom』に連載されました。第1作の『いつか陽のあたる場所で』は2007年に、第2作の『すれ違う背中を』は2010年に、そして第3作の『いちばん長い夜に』は2013年に新潮社より発表されています。

物語の舞台は東京の下町、谷中であり、ここには前科を持つ二人の女性、芭子と綾香がそれぞれの過去を抱えて静かに暮らしています。彼女たちは独特の友情で結ばれ、心の内面や傷を共有しながら生き抜こうとします。

収録作品

いつか陽のあたる場所で

• - おなじ釜の飯（初出：『小説新潮』2005年10月号）
• - ここで会ったが（初出：『小説新潮』2006年4月号）
• - 唇さむし（初出：『小説新潮』2006年10月号）
• - すてる神あれば（「すてる神」改題、初出：『yom yom』vol.2〈2007年2月〉）

すれ違う背中を

• - 梅雨の晴れ間に（初出：『yom yom』vol.7〈2008年6月〉）
• - 毛糸玉を買って（初出：『yom yom』vol.9〈2008年11月〉）
• - かぜのひと（初出：『yom yom』vol.11〈2009年6月〉）
• - コスモスのゆくえ（初出：『yom yom』vol.13〈2009年11月〉）

いちばん長い夜に

• - 犬も歩けば（初出：『yom yom』vol.16〈2010年6月〉）
• - 銀杏日和（初出：『yom yom』vol.18〈2010年11月〉）
• - その日にかぎって（初出：『yom yom』vol.20〈2011年4月〉）
• - いちばん長い夜（初出：『yom yom』vol.22〈2011年9月〉）
• - その扉を開けて（初出：『yom yom』vol.24〈2012年5月〉）
• - こころの振り子（初出：『yom yom』vol.26〈2012年11月〉）

あらすじ

この物語は、過去の犯罪と向き合う二人の女性の視点から展開されます。小森谷芭子は29歳で、強盗罪を犯して服役していました。彼女は裕福な家庭で育ったものの、自らの選択によって人生は大きく変わりました。大学生活まで順風満帆だった彼女が、ホストに恋をし、次第に犯罪の道へ進んでしまう。出所後は家族との関係が断たれ、祖母の家でひっそりと生きることに。

もう一人の女性、江口綾香は41歳で、夫のDVから長年苦しんだ末、反撃として夫を亡き者にしてしまい、刑務所で服役していました。彼女は芭子と同室であり、友情を育んでいきます。二人はそれぞれの過去に向き合い、互いの支えとなっていく過程が描かれています。

登場人物

小森谷芭子

強盗罪で服役した29歳の女性。刑務所での生活が彼女の人生に大きな影響を及ぼしています。出所後は人目を避けるような生活を送りつつ、ペット用の服を作る仕事を始めます。

江口綾香

41歳。前夫の暴力から逃れるために犯罪を犯してしまった女性。彼女は再出発を目指し、ボランティア活動を通して生きがいを見出します。

テレビドラマ化

シリーズ第1作と第2作を基にしたテレビドラマ『いつか陽のあたる場所で』が2013年に放送されました。上戸彩と飯島直子が主演し、彼女たちの過去の苦悩と希望を描く感動的なストーリーが展開されます。

スペシャル版

2014年には続編も放送され、原作と異なる部分も多く見受けられました。ドラマ版では新たなキャラクターやエピソードが加えられ、物語はさらに深みを増したものとなりました。

このシリーズは、犯罪を犯した女性たちの心の葛藤や友情の絆を通じて、人間の強さや再生をテーマにしています。彼女たちの人生は多くの読者に感動を与え、共感を呼び起こしています。

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